研究概要 |
本年度は、昨年度に引き続き熱帯ウナギと温帯ウナギの回遊生態との相違を明らかにするため、インドネシア・マレーシア・ベトナムに生息する熱帯ウナギ、Anguilla bicolor bicolor, A. bicolor pacificaの回遊特性を明らかにすることを目的とし、それぞれの地点で異なるウナギ属魚類が、一貫して淡水域で生息していたもの、一貫して汽水域で生息していたもの、一貫して海水域で生息していたもの、淡水域から海水域へと生息場を移動させたもの、さらに、淡水域と海水域を複数回往来していたものなど、非常に多様な回遊パタンを持つことが明らかになった。また特にベトナムのPhuYenに関しては非常に多様な回遊パタンが見られた。一貫して淡水域で生息していたもの、一貫して汽水域で生息していたもの、さらにこの中には汽水域でも塩分が高めの環境で生息していたものと低めの環境で生息していたものがいることが明らかになった。この多様な回遊パタンにはPhu Yenの地形と川幅の大きさに起因していると考えられた。 また、熱帯ウナギの耳石Sr/Ca比と塩分濃度の関係が明確にするため、ベトナムで飼育実験を行った。これまで、回遊生態を判別する際の指標には、温帯ウナギの値が用いられてきた。しかし、熱帯ウナギの回遊生態を研究する場合、温帯ウナギの指標を用いるのは適切でない事が考えられ、追加実験として熱帯域ベトナムでの飼育実験を行った。これにより、これまで明されていない熱帯ウナギの耳石Sr/Ca比と塩分濃度の関係が明確になった。この指標は、今後熱帯ウナギの回遊生態を解析する上で非常に有用なものである。
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