研究概要 |
平成24年度においては、スメクチック液晶を溶媒として電解重合を行う際に、磁場を基板電極に対して平行・垂直・斜めにそれぞれ印加することによって、基板に対する高分子鎖の成長方向の制御を試みた。 得られた高分子は、膜内部において高分子鎖が基板に対してそれぞれ平行・垂直・斜めに配向していることが確認された。また、モノマーの分子構造を系統に変えて合成し、同様の実験を行ったところ、膜内部での高分子鎖の配向度および表面構造が異なっていた。特に4,4'-dimethyl-2,2'-bithiopheneモノマーから得られる垂直配向高分子膜については、その表面に垂直に配向したナノフィブリルが密集した構造を形成しており、表面積が大きくかつ基板に対して垂直方向への高い電荷移動度が求められる有機薄膜太陽電池のドナー材料として、有望な材料であると考えられる。さらに、基板に対して水平に配向させた高分子膜は、還元状態において高い二色比の偏光発光を示し、偏光発光材料への応用が期待できる。 これとは別に、螺旋配向を有するコレステリック液晶中で電解重合することによって、液晶が有する螺旋分子配向に沿って高分子鎖が螺旋会合を形成することを確認した。系統的に分子構造を変えて合成した三十種類以上のモノマーを、左巻き螺旋構造を有する液晶中で電解重合を行ったところ、得られる高分子の多くが円偏光二色性スペクトルにおいて負から正へのコットン効果を示したことから、膜内部において、高分子鎖が溶媒として用いた液晶と同じ左巻きの螺旋会合を形成していることが示唆された。また、異なる分子構造をもつ左巻き螺旋の液晶中においても、同様の結果が得られたことから、液晶の分子構造そのものではなく、螺旋配向した液晶分子による不斉な環境が、高分子の螺旋会合に影響していると考えられる。
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