本研究は、銀河進化に重要な役割を担っていると考えられている銀河環境に着目し、遠方宇宙(z>1)における銀河の性質を調査することで、銀河進化メカニズムの観測的解明を目指している。 前年度はz=1.2の宇宙における銀河の星形成活動と環境の関係を調べ、遠方宇宙では星形成活動は環境に依存しておらず、高密度な環境においても星形成が活発であるという結果を得た。近傍宇宙では高密度環境ほど銀河の星形成活動は不活発であることが知られており、我々の結果は銀河の星形成活動と環境の関係が時間進化していることを示している。この原因を探るため、本年度はz=1.2の時代における星形成活動・銀=河環境に加え、新たに銀河の質量という物量を用い、それぞれの関係を調べた。 その結果、z=1.2の宇宙における、高密度環境の星形成銀河は、重い(質量が太陽質量の10^<10>倍以上重い)銀河がほとんどであり、銀河の環境効果(銀河合体・相互作用)が重い銀河の星形成活動の誘発に寄与していることがわかった。このように銀河合体・銀河相互作用により星形成を誘発された銀河は激しい星生成を起こすことで、星の材料であるガスを使い果たし、時間が経つにつれ星生成ができなくなる。この現象は高密度な環境で起こりやすいため、近傍宇宙においては高密度環境で星形成が活発な銀河が見られなくなるというシナリオが考えられる。 これは、銀河の環境効果の銀河進化に与える役割を確定づけるものとなった。
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