研究課題/領域番号 |
10J01711
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
薄膜・表面界面物性
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
大井 幸多 北海道大学, 大学院・情報科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2010 – 2012
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研究課題ステータス |
完了 (2012年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2012年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | AlGaN/GaN HEMT / 多重台形チャネル構造 / 電流コラプス |
研究概要 |
次世代インバータへの応用を目指し、GaN系トランジスタの研究が盛んになされているが、実用化に向けてはデバイス動作安定性の課題を抱えている。本研究で新チャネル構造として提案している多重台形チャネルAlGaN/GaNHEMTは、しきい値電圧の正方向シフトなど電力変換デバイスへの応用に向けて有利な点を有している。本年度は、特に多重台形チャネルHEMTの電流安定性に着目し、デバイス動作安定性の解析をおこなった。はじめに、ゲートドレイン間距離(LGD)の異なる素子を作製し電流電圧特性を評価した。LGDの増大は、ドレインアクセス抵抗の増大を意味することから、プレーナHEMTではLGDに大きく依存してKnee電圧・オン抵抗の増加が確認された。一方、多重台形チャネルHEMTでは、プレーナHEMTと比較して、Knee電圧・オン抵抗のLGD依存性が弱いことが明らかになった。その要因として、多重台形チャネル構造においては個々のチャネル抵抗が非常に高いことから、アクセス抵抗の変化に影響を受けにくい構造であることが考えられる。GaNトランジスタの課題の一つとして、電流コラプス呼ばれる電流減少現象がある。本研究では、パルス電流電圧測定により電流コラプスを評価した。その結果、多重台形チャネルHEMTはプレーナHEMTと比較して格段に電流変動が少なく、耐電流コラプス性を有することが明らかになった。電流コラプスの要因の一つとして、ゲート電極端からの電子注入よってAlGaN表面準位に電子が捕獲され、その直下の2次元電子ガス(2DEG)密度が減少しアクセス抵抗が増加する点があげられる。電流コラプスの要因がアクセス抵抗の増加であると考えると、前述したような多重台形チャネル構造における高チャネル抵抗が電流コラプスの抑制に寄与していると考えられる。このように本研究では、多重台形チャネルHEMTの電流安定性が高チャネルインピーダンスに起因していることを明らかにし、GaN系トランジスタの高い動作安定性に寄与する知見を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
研究課題である次世代インバータ用GaNトランジスタの実用化に対する最大の問題はトランジスタの動作安定性である。本研究では、ゲートドレイン間距離の異なる素子の評価、ならびにパルス評価によって、新チャネル構造として提案している多重台形チャネルHEMTの電流安定性が高チャネルインピーダンスに起因していることを明らかにし、GaN系トランジスタの高い動作安定性に寄与する知見を得ることができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の今後の推進方策としては、デバイスの動作安定性の向上が報告されている絶縁ゲート構造や表面保護膜の導入により、多重台形チャネルAlGaN/GaNHEMTのさらなる動作安定性を目指す。また、本構造における動作安定性についてさらに詳細に評価をおこない、現象機構の解明をおこなう。
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