研究概要 |
本年度は,Hamilton-Jacobi(HJ)方程式,非局所非線形偏微分方程式について,数学の基礎研究(粘性解理論,弱KAM理論)を進める目的で以下の通り実施した. 研究1.非定常HJ方程式の弱結合系の解の時間無限大での漸近挙動について考察した.この問題は,切り替えコスト問題を背景に持つシステム特有の難しさが生じ,単方程式の研究において使われた技術のアナロジーだけでは解決しないことが分かった.まだ明らかになっていない部分があるが,一部満足のいく結果を得る事ができた. 研究2.非定常HJ方程式の非線形Neumann境界値問題の解の時間無限大での漸近挙動について考察した.この問題の動機も制御問題にある.非凸型HJ方程式の場合には,解の漸近的単調性を偏微分方程式的手法により得ることに成功した.凸型HJ方程式の場合には,弱KAM理論を導入する事で,収束先の表現公式まで与えることに成功した. 研究3.研究1と同じ方程式系の均質化問題を考察し,解が均質化される事を解明した,同システムにおいて,異なった初期値を考えると,初期遷移層が現れる事を発見した.更に,解が均質化された時に現れる有効的ハミルトニアンの表現公式や形状に関して,吟味した. 研究実施計画通り,昨年度に引き続き4月から8月前半にかけて,カリフォルニア大学バークレー校(アメリカ)に滞在し,研究を進めた.また,研究実施計画に記述した研究集会に予定通り参加し,研究発表を行った.研究集会の参加者と生産的な討論を行うことができ,且つ,最新の情報を得ることができた.
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