研究概要 |
平成23年度は準長石族鉱物であるメリライトとネフェリンにおける結晶化学的研究を行い,複数の配位席におけるイオン置換と構造変化に関する考察を行った. 1.メリライト(W_2T1T2_2O_7)に関しては,Ca_2MgSi_2O_7(Ak)-Ca_2Fe^<3+>AlSiO_7(FAGeh)系のメリライトを合成し,常温・高温X線粉末結晶構造解析,^<57>Feメスバウアー分光分析,高分解能透過型電子顕微鏡(TEM)観察を行い,二つの4配位席(T1,T2)における3価の陽イオンの挙動と変調構造に及ぼす影響を検討した.この結果,1)Fe^<3+>がT1とT2席の両方に分布すること,2)T2席はT1席に比べて共有結合性が著しく強いこと,3)T1とT2席における遷移金属イオンとAl^<3+>の分布は,T1O_4およびT2O_4四面体の大きさと陽イオンのイオン半径だけなく,4配位席における共有結合性と元素の電気陰性度にも関係することが明らかとなった.また,メスバウアー分光分析より,メリライトの変調構造がT1席の歪だけでなく,陽イオン置換によるT2席の歪の増加によることを発見した.メリライトにおいては,4配位席における陽イオン分布によってT1席およびT2席の変形度が変化し,変形型変調構造が形成される. 2.島根県浜田市産ネフェリン(Na_6K_2Al_8Si_8O_<32>)の4配位席(T1,T4,T2,T3)における陽イオン分布,変調構造,双晶に関する研究を電子線微小部分分析装置,低温(-173℃)・常温(25℃)での単結晶X線構造解析,TEM観察を用いて行った.その結果,4配位席においてSiとAlが秩序配列をしており,空間群はP6_3,また,merohedryによる双晶を持つことが明らかとなった.4試料の結晶構造解析の結果,変調構造を示すのは常温ではNep3のみであるが,低温では試料Nep2,3,4で変調構造が認められた.ネフェリンの変調構造は,merohedryによる双晶やO1原子の変位によるフレームワークの変形によって生じる変位型変調構造である. 3.準長石族鉱物の4配位席における陽イオン分布と変調構造の形成の関係は,複数の6配位席を持つ鉱物における陽イオン分布と変調構造形成の関係に拡張した.
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