研究概要 |
植物の成長点である茎頂分裂組織(Shoot Apical Meristem、以下SAM)は、自らを未分化な状態に維持しつつ、一生を通じて次々と葉や茎・花などの器官を生み出す、いわば植物の形づくりの中心である。SAMの維持に必須な転写因子であるイネのKNOX遺伝子の一つ、OSH1の直接のターゲット遺伝子を網羅的に同定し、SAMの維持メカニ」ズムを明らかにするために以下の研究を行った。 (1)昨年度発見したSAMの維持に不可欠なOSH1の自己制御機構について、論文で発表した。 (2)ChIP-seq法により同定した約30,000のOSH1結合領域のうち、統計学的に有意なものを絞り込むため、MACSによるin silico解析をおこない、信頼度の高い結合領域を4,978個に絞り込んだ。 (3)これら結合領域の近傍に位置する遺伝子を直接の標的遺伝子と定義し、4,178遺伝子を同定した。 (4)これら標的遺伝子の多くは、発生関連の転写因子や、植物ホルモンであるオーキシン・ブラシノステロイド・ジベレリンの生合成/シグナル伝達経路の遺伝子であった。 (5)OSH1結合領域の各遺伝子に対する相対的な位置を調べたところ、大部分が転写開始点および終了点付近に存在することが明らかになった。 (6)OSH1結合領域のDNA配列データから共通して存在するDNA配列モチーフをMEMEにより検索した結果、G/TGAT/CGG/TGACというモチーフが全OSH1結合領域中の90%以上に存在することがわかった。 ((2)~(6)のデータ解析はカリフォルニア大学Sarah Hake研究室にて手法を学んでおこなった。) 本研究により、植物ホルモンであるオーキシンやブラシノステロイド、および転写因子とのクロストークが明らかになったことは今後の植物発生学の研究において重要な知見となると考えられる。
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