研究課題
特別研究員奨励費
キノカルシンは1983年に高橋、富田らにより単離されたテトラヒドロイソキノリンアルカロイドであり、リンパ性白血病細胞に対して強力な増殖阻害活性を有することが知られている。また縮環型オキサゾリジン骨格を含む特徴的な構造から、多くのグループにより合成研究が行われてきた。一方、中心骨格であるピペリジノヒドロイソキノリン骨格は様々な天然物に共通して見られる骨格であるため、本中心骨格を効率的に構築する新規方法論の開発は、今もなお強く求められている。申請者は、既存のPictet-Spengler縮合によるテトラヒドロイソキノリン構築法とは異なる、遷移金属触媒を用いたアルキンの分子内ヒドロアミノ化反応を基盤とした新規合成戦略を立案した。以前の研究により、鍵工程である分子内ヒドロアミノ化反応において、ジヒドロベンゾフラン骨格を有するアルキンを基質として用いることで、望みの6-endo-dig型生成物が完全な位置選択性で得られることを見出している。更にプロモアレンのシス選択的アミノ化反応により合成したピロリジン誘導体との園頭カップリングと、続くヒドロアミノ化反応により、キノカルシン中心骨格を有する縮環型ラクタムの合成に成功している。本年度の研究で、ルイス酸によるジヒドロベンゾフラン環の開環反応によりフェニルグリシノール誘導体へと変換したのち、数工程の官能基変換を行うことでキノカルシンの不斉全合成を達成した。また種々の構造を有するジヒドロベンゾフランを用いた検討により、ルイス酸によるジヒドロベンゾフランの環交換反応が進行する構造的要因を明らかにし、本環交換反応を用いてキノカルシナミドの形式不斉全合成を達成した。
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