研究概要 |
XY型の性染色体構成を持つホオジロクロガメ(Siebenrockiella crassicollis,SCR)、スジオオニオイガメ(Staurotypus triporcatus,STR)とサルヴィンオオニオイガメ(Staurotypus salvinii, SSA)を対象として、比較染色体マッピングにより性染色体に連鎖する機能遺伝子群を同定し、カメ類における性染色体の起源とその分化過程について考察した。SCRにおいて、ニワトリ5番染色体連鎖遺伝子のSCRホモログを14個クローニングし、FISHマッピングを行った。その結果、全ての遺伝子がXY染色体にマッピングされ、遺伝子オーダーもX-Y染色体間で違いは見られなかったが、14遺伝子のうち2つの遺伝子がX染色体では長腕の動原体付近にマップされたのに対し、Y染色体では短腕の動原体付近に存在していた。同様に、STRにおいて17個のニワトリZ連鎖遺伝子のSTRホモログをクローニングし、マッピングした結果、17個全ての遺伝子がXY染色体の長腕に同じオーダーでマッピングされた。また、クローニングしたSTRホモログの内10個が、現在まで、SSAのXY染色体においてもSTRのものと同じオーダーでマッピングされた。以上の結果は、SCRのX染色体はニワトリ5番染色体と、STRとSSAのX染色体はニワトリ(鳥類)のZ染色体と相同であることから、カメ目における性染色体の起源が多様であることを示している。また、3種のXY染色体は性染色体分化の初期段階にあるが、SCRのY染色体で動原体の移動が生じたことが示唆された。本研究は、初めてXY型のカメの性染色体の起源を明らかにしたものであり、爬虫類における性染色体の起源の多様性を支持するとともに、脊椎動物における性決定様式の進化過程とその多様性に関する重要な基礎情報を提供するものである。
|