研究概要 |
植物の2大栄養素である,光合成によって得られる糖(C)と根から吸収される窒素(N)はその代謝がクロストークしており,互いに厳密な制御がなされている。それにより,植物はこのCとNの相対量比(C/N)を感知し適切に応答する能力をもっている。 申請者らは,この「C/N応答」に着目し,植物C/N応答のメカニズム解明を目指し研究を進めている。これまでにスクリーニングによりC/N非感受性の変異体を単離し,その原因遺伝子が膜局在ユビキチンリガーゼATL31であることを同定した。また,そのユビキチン化標的タンパク質候補として14-3-3群を単離している。さらに昨年度までに新規ATL31相互作用因子として細胞膜局在型SNAREのSYP121を同定している。 SYP121はうどんこ病菌への抵抗反応に関与することが知られている。植物はうどんこ病菌侵入時に,パピラと呼ばれる物理的障壁を作ることでその侵入を阻止しようとする。SYP121は細胞膜上のうどんこ病菌侵入部位に特異的に集合し,パピラ構成成分を運んできた小胞上にある小胞型SNAREを受け止めることで部位特異的なパピラ形成が完了する。 本年度は,ATL31もまたうどんこ病菌への抵抗性に関与しているかを検証した。その結果,ATL31がSYP121と同様に,うどんこ病菌侵入部位に集合すること及び,ATL31過剰発現体ではパピラ形成速度が増加し,侵入阻止率が増加することを見出した。 C/N制御がパピラ形成に関与する報告は今までに無く,新規の制御メカニズムの提唱が見込まれる。今後は,SYP121とATL31の相互作用の詳細や,C/N応答とパピラ形成の関係について,遺伝学的,生化学的及び生理学的解析により解明を試みる。これにより,ATL31によるC/N制御が,どのように免疫応答に関与しているか,理解を深める。
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