研究課題
特別研究員奨励費
ストレス応答性ホスファターゼPPM1ファミリーは、様々な情報伝達を制御している。その機能および制御機構の解明は極めて重要であり、悪性腫瘍をはじめ虚血性脳梗塞、心筋梗塞の治療のターゲットとして注目されている。本研究では、PPM1Aに対する阻害剤のスクリーニングを実施した。その結果、PPM1Aに対する阻害活性有する化合物が数種存在したが、サブμMのIC_<50>を持つ強力な阻害剤は得られなかった。また、PPM1D阻害剤のin vivoにおける阻害活性評価系の確立のため、これまでに同定したPPM1D阻害剤SPI-001の細胞内における活性評価を実施した。PPM1Dはリン酸化p53を脱リン酸化することが知られている。PPM1Dが過剰発現している乳癌由来のMCF7細胞に対してSPI-001を作用させた結果、p53のリン酸化は著しく増加し、SPI-001がヒト癌細胞内においてもPPM1D阻害能を有することが示唆された。さらに細胞数を計測することで細胞増殖に対する効果を解析した結果、MCF7細胞増殖を抑制することを明らかとした。一方で、PPM1Dの発現量に異常がないA549細胞の増殖に対して、SPI-001は影響を与えなかった。加えて、FACSによる細胞周期の解析によりSPI-001はアポトーシスを誘導することを示した。PPM1D阻害能を持たないSPI-001誘導体SL-104を細胞に投与した結果、細胞増殖や細胞周期に変化が見られなかった。以上のことから、SPI-001はヒト癌細胞内においてPPM1D活性を阻害し、細胞増殖抑制能を有することを明らかとした。SPI-001は抗癌剤のリード化合物としての展開が期待される。
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