研究課題/領域番号 |
10J02103
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
ナノ構造科学
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
平兮 康彦 九州大学, 工学研究院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2010 – 2012
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研究課題ステータス |
完了 (2012年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2012年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | カーボンナノチューブ / フォトルミネッセンス / 電子構造 / 酸化還元電位 / カイラリティ / バンドギャップ / フェルミ準位 / フォトルミネッセン / 分光電気化学 / Raman分光法 / 電子状態 / 摂動 / ポリマー / 金属ナノ粒子 / Metal-Semiconductor転移 |
研究概要 |
単層カーボンナノチューブ(Single-Walled Carbon Nanotube:SWNT)の電子準位(酸化電位、還元電位、フェルミ準位)は、ナノチューブの特性を理解するうえで非常に重要である。これまで、各カイラリティの特性を正確に網羅的に調べる方法は、報告されていなかった。これまでにSWNTのPhotoluminescence(PL)を用いた分光電気化学法を開発し、各カイラリティの電子準位を網羅的に決定できることを示している。しかし、これまでの実測範囲は、直径(d)=0.75~1.10nmの範囲に留まっていた。今回、細いSWNTにPL分光電気化学測定法を適用し、その電子準位を実験的に決定した。新たに決定したカイラリティとこれまでに求めたカイラリティの電子準位を合わせて、合計18のカイラリティの電子準位の実験データが得られた』この実験データを元に、SWNTの直径および、カイラルアングルを考慮し、SWNTの電子準位を経験的に予測できる数式を立てた。この経験式により、酸化電位と還元電位の直径依存性に見られるカイラリティファミリーパターンが異なることが明らかになった。還元電位では、mod(カイラル指数(n,m)の2n+mの値を3で割ったときの余り)の値によるファミリーパターン(mod依存性)とカイラルアングル依存性が顕著に見られたのに対し、酸化電位ではほとんど見られなかった。この傾向の違いは、フェルミ準位とバンドギャップのカイラルアングル依存性、mod依存性により説明できる。これらの結果は、カーボンナノチューブの酸化還元特性に関する重要な知見であり、グラフェンなどのナノカーボンの物性の理解にもつながると考えられる。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
酸化電位と還元電位のカーボンナノチューブ直径依存性における、カイラルアングル依存性、mod依存性の違いが詳細に明らかになった。これらは、これまでに明らかにされていなかったカーボンナノチューブの酸化還元特性についての新たな知見であり、カーボンナノチューブの基礎物性の理解に大いに役立つと考えられる。またカーボンナノチューブの特性解明のみならず、グラフェンなどのナノカーボンの物性理解につながるものである。
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今後の研究の推進方策 |
更なるカイラリティの電子準位の実験データを増やすことが必要である。特に太いカーボンナノチューブ(直径1.5nm前後)は、可溶化が困難である。この問題点を克服するために、高出力の超音波照射を行った後、フィルムを作製するなどし、太いカーボンナノチューブが孤立分散した状態を維持する必要があると考えられる。また、細いカーボンナノチューブ(直径0.5nm前後)の電子準位が、実験的に解明できれば、電子準位へのカーボンナノチューブの曲率の効果を明らかにできると考える。そのために、二層や多層のカーボンナノチューブを超音波照射後、密度勾配遠心処理などにより内層のカーボンナノチューブを採取する必要がある。
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