研究概要 |
プロスタグランジン(PG)は、多くの脊椎動物において排卵誘導作用を示す因子として知られているが、その分子機構については未だに明らかになっていない。そこで、本研究では排卵研究に適した生物であるメダカを用いて、PGによる排卵誘導の分子機構を明らかにすることを目的とする。これまでにPG合成酵素COX-2及びPGE2受容体EP4bの解析を行い、PGE2が排卵時にアクチン重合調節に関与していることを示唆する結果を得た。平成24年度ではPGE2シグナルによって働くアクチン重合の調節機構及び排卵への作用機構について調査し、以下の研究成果が得られた。 1.アクチン重合を調節する因子であるRhoファミリーについて、メダカの排卵への関与をin vitro排卵実験系を用いて調査した。その結果、Rho阻害剤でのみ排卵が阻害された。さらに、Rhoの下流因子であるRhoキナーゼの阻害剤をin vitro排卵実験系に添加した場合においても排卵が阻害された。 2.メダカのゲノムデータベースより、Rho遺伝子はRhoA, RhoB, RhoCの3種類が存在しており、排卵前濾胞における各Rho遺伝子の発現量を調べた。その結果、RhoAが最も高く発現していた。また、排卵前濾胞において活性型RhoAが検出された。 3.メダカ排卵時における濾胞の収縮とPGE2の作用との関連について調査を行った。その結果、EP4bアンタゴニストによって濾胞の収縮が阻害された。また、EP4bアンタゴニストとRho活性化剤を添加し培養を行うと、何も添加していない場合と同程度まで収縮した。 以上の結果より、メダカではPGE2が、EP4b-RhoA-アクチン重合調節の経路を介し、濾胞を収縮させることによって、排卵に寄与していると予想された。
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