研究概要 |
本研究の目的はニュートリノを伴わない二重ベータ崩壊事象(Onu mode)の探索である。この崩壊は標準理論を超えた事象であり、観測されれば、ニュートリノがマヨラナ粒子であることが示される。また、質量階層構造、有効質量を明らかにし、未知であった絶対質量に示唆を与えることが可能となる。しかしOnu modeは非常に稀な低エネルギの事象であり、大量の崩壊核、低バックグラウンド環境での測定が必要である。そこで、既にその条件を有しているニュートリノ検出器KamLANDを用い、ここにキセノン含有液体シンチレータ(崩壊核^<136>Xe、約300kg)を内包した直径約3mのミニバルーンをインストールし、崩壊率を測定する(KamLAND-Zen)。今年度は、前半で主にミニバルーンの作成、液体シンチレータ(デカン、PC,PPO)の蒸留、ミニバルーンのインストールが行われ、二重ベータ崩壊の半減期測定が開始された。8月からは、実際のデータを使用しての解析を行い、エネルギ及び位置分解能を見積もるためのThO_2Wを用いたキャリブレーションも行った。今までに使用していた装置は構造上、継続して使用できなかったが、KamLANDでのキャリブレーションの経験を生かし、データを取得する事が出来た。KamLAND-Zenとしての最初の結果は、10月12日からの77.6日分のデータを使用し、バックグラウンドの解析、^<136>Xe二重ベータ崩壊(2nu mode)の寿命測定、Onu modeの寿命の下限値を報告している。特に^<136>Xeの2nu modeの半減期の測定は今までの実験で最も高精度であり、2011年に報告されたEXOの結果と誤差の範囲内で一致する事が確かめられた。今までの測定では、2002年にDAMAが報告した半減期(下限値)とEXOの結果で5倍以上ずれていたのだが、この矛盾に決着が付けられた。また、Onu modeのエネルギ領域では予期しないバックグラウンドがあることが明らかになったが、それでも世界でトップクラスの寿命の下限値を得られた。これらの成果は、Physical review Cへの掲載が決定されている。また、国際会議や日本物理学会等で報告を行った。
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