研究概要 |
弦理論は量子重力理論の有力な候補であると考えられているが,解決すべき重要な問題点もいくつか抱えている.そのため,弦理論の基礎的な理解を深めていくことは不可欠である.本研究は,そのような観点から,弦理論の基礎的な性質と深く関わっていると考えられているAdS/CFT対応の理解を深めるための手段として,反ド・ジッター時空における弦の量子化を目指している.2012年度は,AdS/CFT対応と同様に弦理論の基礎的な理解につながると考えられる弦の場の理論の研究を主に行ってきた. 1.開弦の場の理論における古典解 弦の場の理論は背景に依存しない弦理論の定式化として期待されている.そのため,弦の場の理論で記述可能な背景を系統的に議論することは重要である.発表論文1において我々は,KBc代数と呼ばれるクラスの弦の場の配位の部分空間で記述可能な背景を境界状態と呼ばれる物理量の計算を用いて議論した.同論文の内容については,国内の学会1~3において発表した. 2.超開弦の場の理論の定式化に向けて 現在までに超開弦の場の理論は複数提唱されているが,未だに満足のいく定式化は得られていない.そのため,これらの関係性を議論しておくことは重要であると考える.現在執筆中の論文(東京大学と名古屋大学に所属する飯森悠樹氏,東京大学の大川祐司氏と鳥居真吾氏との共著)において,Berkovitsによる定式化とwittenによる定式化の関係を散乱振幅とゲージ対称性の構造の観点から議論した.この論文の内容については国内学会4において発表した. また,本研究の動機と直接の関係はないが,発表論文2においてインフレーション理論に関する研究を発表した.この論文の内容は学会発表5~8において発表した.
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