研究概要 |
本研究では、半導体量子ドットを用いて中間バンドを形成することで太陽電池の高効率化を図ることを目的としている。本年度は、長いキャリア寿命を有するInGaAs/GaAsSbタイプII量子ドット超格子セルをGaAs(311)B基板上に作製し評価した。その結果、タイプII構造の形成により、発光再結合損失が減少し、さらに中間バンドを介した2段階の光吸収レートが増大することを見出した。また、セルの特性としては非集光下において、J_<sc>=28.1mA/cm^2,V_<oc>=0.824V,FF=0.747が得られ、変換効率は17.3%を達成した。 次に、量子ドット内のキャリアが熱励起によって脱出する過程を抑制して2段階光吸収レートをさらに増大させるために、量子ドット超格子セルの母体材料としてバンドギャップエネルギーの大きいAIGaAsを用いることを検討した。本試料においては、価電子帯から伝導帯に励起された電子が量子ドット内に閉じ込められた後、赤外光を利用して再び伝導帯に励起される2段階光吸収過程の量子効率を最大で約4%まで向上させることに成功した。これは、母体材料のバンドギャップエネルギーを大きくしたことで、量子ドットの内のキャリアの熱励起が抑制され、光学遷移が向上したと考えられる。このとき、2段階光吸収による生成電流量はAM1.5太陽光スペクトル照射時における短絡電流値の12.6%を占めており、非常に高い値を得た。 上記の結果は、量子ドットから伝導帯への光学遷移が十分高いことを示唆しており、中間バンド型太陽電池において非常に有用な研究成果と考える。
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