研究概要 |
当該年度では,siRNAの細胞内動態制御技術を用いたがん治療を目的として,in vivoでのsiRNAの作用の確認や,これによる治療効果の評価を行った。昨年度までに生体内環境に応答してsiRNAが細胞内へと移行するカチオン性脂質YSK05を含むMEND(YSK-MEND)の調製しており,今年度は、YSK-MENDに封入するsiRNAを、抑制することで腫瘍細胞に対して殺細胞効果を有する遺伝子であるPLK1に対するsiRNA(si-PLK1)を内封し、担がんマウスに対しての治療効果を評価した。治療用siRNAを内封したMENDを3.0mg/kgで6回静脈内投与を行ったところ、穏やかな腫瘍成長抑制効果が得られたもののその阻害は有意なものではなかった。この成長抑制効果を更に増強するために、PLK1のノックダウンと協調して作用が強まることが知られているドキソルビシンとの同時投与を試みた。ドキソルビシンはリボソームに内封した形で担がんマウスに投与を行い、1.5mg/kgでsiRNA封入MENDと最初の3回まで同時に投与を行った。その結果、ドキソルビシンの同時投与によってより強い抑制効果が観察された。また、アポトーシスが起きた細胞と反応して蛍光を発する試薬を投与することで、腫瘍内のアポトーシスの様子を観察したところ、si-PLK1とドキソルビシンの同時投与によってアポトーシスが強く誘導されていることが明らかとなった.この結果,siRNAにより既存の抗ガン剤の効果を高めるという、併用療法に繋がる結果であると考えている。また、本研究で用いた腎細胞がんは既存の抗ガン剤が奏功しないがん種であることから、この成果は腎細胞がんの新たな治療法の開発に繋がると考えられる。
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