研究課題
特別研究員奨励費
平成23年度はキナーゼ応答性ポリマー/プラスミドDNA(pDNA)複合体の安定性向上に関して検討した。これまでに親水性高分子であるポリエチレングリコール(PEG)をキナーゼ応答性ポリマーに修飾し(NPAK-PEG)、塩、血清タンパク質存在下で複合体が凝集することなく安定に存在することを示したが、PEG修飾によりNPAK-PEG/pDNA複合体がキナーゼの活性に関わらず導入遺伝子の発現を抑制することができないことが示唆されていた。本年度はこのNPAK-PEG/pDNA複合体をマウスに血中投与し、PEG修飾によるpDNAの血中滞留性が向上したかどうかを評価したが、PEG修飾したNPAK-PEGを用いた場合でも血中滞留性は向上しなかった。そこで申請者は、新たなアプローチとして疎水性分子であるコレステロールをキナーゼ応答性ポリマーに修飾した。NPAK-PEGも含め、これまでのキナーゼ応答性ポリマーはポリマーの正電荷とpDNAの負電荷による静電相互作用のみで複合体を形成していたのに対し、コレステロール修飾キナーゼ応答性ポリマーはコレステロールの疎水性相互作用も複合体形成に寄与することが期待された。主鎖を親水性の高いポリジメチルアクリルアミドとし、コレステロール修飾キナーゼ応答性ポリマー(PDAK-Cho1)を合成した。次に、PEG修飾ポリマーの安定性評価の際と同様に、塩、血清タンパク質存在下で複合体が安定に存在するかどうかを評価したところ、PDAK-Cho1/pDNA複合体は複合体が崩壊することなく粒子を形成していた。また、過剰のポリアニオン存在下でもpDNAを遊離しなかった。これらの結果から、コレステロール修飾により複合体の安定性が向上することが示唆された。PDAK-Cho1/pDNA複合体を実際にがんモデルマウスに投与したところ、コレステロール修飾により血中滞留性は大きく改善されることが示されたが、がん蓄積能が低く、がんにどのように蓄積させるかが今後の課題である。
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