研究課題
特別研究員奨励費
光化学系II複合体(以下PSII)は、植物のチラコイド膜内に存在し、光誘起電荷分離反応によって電子伝達を行う超分子複合体である。この電荷分離によって反応中心である二量体クロロフィルP680はラジカルカチオンとなり、酸素発生中心であるMn4CaO5クラスターで水酸化による酸素発生反応を可能とする。植物の酸素発生機構を解明するため、世界の複数の研究グループがPSIIの結晶構造解析に取り組んできたが、これまで報告されてきた立体構造はどれも低分解能であったため、Mn4CaO5クラスターとその配位子群の詳細な立体構造情報を得ることが出来なかった。この最大の理由として、どの研究グループも良質なPSII結晶を作製することが出来なかったことが挙げられる。研究代表者は、長年PSIIの精製・結晶化方法の最適化を行い、1.9A分解能のX線回折強度データを収取できる、非常に良質なPSII結晶の作製方法を確立させた。本研究の目的は、このPSII結晶作製法を用いて酸素発生反応に不可欠な塩素イオンをヨウ素イオンに置換したことによって引き起こされる酸素発生反応の停止機構を構造学的に明らかにするとともに、PSIIの酸素発生反応における塩素イオンの役割を解明することである。PSIIの立体構造を原子レベルで解析することは、人類が探求し続けてきた植物の酸素発生の仕組みを明ちかにするばかりでなく、植物の酸素発生中心構造を模倣した触媒開発研究が進展し、太陽光エネルギーを利用した革新的なエネルギー生産システムの開発が期待できる。研究実施計画として、Native-PSII結晶の作製法を用いて、塩素イオンと置換可能な臭素イオン(Br)・ヨウ素イオン(I)を用いてそれぞれの置換体結晶の作製・構造解析を行い、ヨウ素置換によって引き起こされる立体構造変化をNative-PSII及びBr-PSIIの構造と比較することで明らかにする。そして、明らかとなった立体構造変化が酸素発生反応の失活に直接影響しているかどうか確認するため、様々な分光学的装置による測定を行う。
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