研究概要 |
本研究の目的は,近赤外線分光法装置によって,生後1年に満たない乳児の顔処理発達の神経基盤を検討することである。乳児の顔処理能力の発達は主に乳児の注視行動を指標として検討されてきており,脳機能の発達との関連を示す知見は数少ない。顔観察時に生起する乳児の脳血流反応を計測することによって,顔処理能力の発達と脳機能の発達との関連を明らかにすることにつながる。 まず平成23年度に実施していた,神経順応パラダイムを近赤外線分光法計測に適用することによって生後5・8ヶ月児が顔のサイズの変化に関わらず同一人物の顔を認識しているか検討する研究の成果について,Neuro Report誌に発表した。また平成22年度から実施している神経順応パラダイムによる近赤外線分光法計測で明らかにしてきた乳児の脳の側頭領域における顔処理特性について,2012年6月にInternational Conference of Infant Studiesおよび11月の43rd NIPS International Symposium "Face Perception and Recognition"においてポスター発表を行った。 平成24年度は,生後5・8ヶ月の乳児が顔の内部特徴(目や口)の変化に関わらず,同一人物の顔として処理できるかの検討を開始した。現在もデータ取得中であるが,顔の内部特徴の変化に関わらず顔を処理する能力は生後7ヶ月頃に発達することを示唆するデータが得られている。また2013年3月にUniversity of Milano-BicoccaのViol aMacchi Cassia教授の研究室に1週間滞在し,研究室見学および共同研究の打ち合わせを行い,乳児の顔処理能力の発達に対する顔を見る経験の影響を解明する行動実験・脳活動計測実験を開始した。 その他,2012年11月にThe University of Western AustraliaのGillian Rhodes教授およびLindaJeffery研究員と共同研究の打ち合わせを行い,その準備を進めている。
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