研究概要 |
本年度は、昨年度におけるフランスでの史料調査の成果などをもとに、二本の論文を発表した。 「18世紀在華イエズス会士アミオと満洲語」では、満洲語文法を解説した"Grammaire Tartare. Mantchou"や、満洲語・フランス語辞典Dictionnaire Tartare-Mantchou-Francoisといったアミオ著作、さらに乾隆帝『御製盛京賦』や満文『武經七書』といった満洲語典籍のアミオによるフランス語訳について、分析を行った。 分析にあたっては、アミオが用いた満洲語および漢語の文献、またアミオより前の在華イエズス会士による満洲語関係著作も参照し、アミオ独自の満洲語観について探ると共に、こうしたアミオの満洲語観と18世紀当時のフランス知識界との関わりについて検討した。 「イエズス会士アミオのみた乾隆帝と清朝官僚」では、乾隆帝および阿桂や于敏中ら清朝官僚による政治について、アミオが行った報告を取り上げた。アミオは、しばしば邸報を拠り所として、乾隆朝の為政に関する報告を行っている。本論文では、これらのアミオ報告を、当該時期の『上諭〓』、『起居注』、『實録』などと対照、分析し、さらにこうしたアミオ報告と当時のフランス思潮との関わりを明らかにした。また昨年度に引き続き、本年度もフランス国立図書館写本室での史料調査を行った。アミオの報告の多くは、18世紀在華フランス人イエズス会士の報告を編纂したMemoires concernant l' histoire, les sciences les arts, les mceurs, les usages, &c. des Chinois全16巻(1776-1814)の中に収録され、当時のフランス知識界において広く読まれた。しかしこの二回の史料調査で、(1)アミオ報告の原文史料と、(2)Memoiresに収録されたものとを比較した結果、報告によっては(1)から(2)への過程で文章がかなり削られていることが明白になった。このことから、アミオ報告の原文史料の重要性だけでなく、(1)と(2)の間に介在した人々(Memoires編纂に携わったフランス国務卿ベルタンら)の意図を探る必要性についても、認識を新たにした。
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