研究課題/領域番号 |
10J02792
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
医療系薬学
|
研究機関 | 大阪大学 |
研究代表者 |
高橋 梓 大阪大学, 薬学研究科, 特別研究員(DC2)
|
研究期間 (年度) |
2010 – 2011
|
研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
|
配分額 *注記 |
1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
|
キーワード | 非侵襲性投与 / タイトジャンクション / claudin / 粘膜・皮膚バリア制御 |
研究概要 |
昨今のバイオ医薬品シーズの増大、患者の生活の質(QOL)および高齢化に伴う嚥下困難な患者の増加を考慮すると、消化酵素による分解を回避でき、非侵襲性である経鼻・経肺・経皮投与が理想的な投与方法であると言える。しかしながら、元来粘膜・皮膚は外部環境から生体内部環境を保護するバリアとして機能しており、ごく一部を除き粘膜・皮膚バリアを効率よく透過しうる薬物は少なく、ここに非侵襲性投与法開発の難しさがある。98年に京大月田グループにより、タイトジャンクション構成蛋白質claudin(CL)が生体バリアを司っていることが見出され、現在までにCLには27種類の分子が同定されている。興味深いことに発現およびバリア能には組織特異性が認められ、CL-1は皮膚や粘膜、CL-4は粘膜、CL-5は血液脳関門においてバリア能を担っていることが明らかになっている。以上の背景を踏まえ、申請者は、CL-4 binder(C-CPE)をモデル分子として用いてCLを利用した新規薬物送達方法の開発、C-CPEの機能ドメイン解析、C-CPE194誘導体ライブラリの構築、CL binderスクリーニング系として発芽型バキュロウイルス(BV)発現系の構築を実施してきた。 平成22年度は、BV発現系を用いたCL binderスクリーニング条件を設定し、C-CPE194誘導体ライブラリの中からCL-1binderのスクリーニングを試み、CL-1 and -4 binder(m19)を取得した。平成23年度は、Caco-2細胞単層膜培養系を用いた膜電気抵抗値(TEER)測定およびラット腸管ループ法により、m19がC-CPEに比して優れたタイトジャンクションバリア制御活性および粘膜吸収促進活性を有することを見出した。さらに、m19の機能ドメイン解析・立体構造解析により、m19とCL-1の結合に静電的相互作用が関与している可能性を見出した。今後、m19/CL-1、C-CPE/CL-1複合体の立体構造解析情報の集積を図ることで、druggable CL-1 binderの創出および創薬への展開が可能になるものと期待される。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
BV発現系を利用したCL binderスクリーニング系を開発し、C-CPE変異体ライブラリからCL-1 binder(m19)のセレクションに成功した。C-CPEに比してm19は優れたバリア制御活性、粘膜吸収促進活性を有していたものの、ヒト皮膚モデルを用いた経皮吸収促進効果の解析では吸収促進効果は認められなかった。m19の機能ドメイン解析・立体構造解析により、m19とCL-1の結合に静電的相互作用が関与していることを見出しており、今後この立体構造情報を利用してCL-1結合性・バリア制御活性に優れたdruggable CL binderの創製を試みる。
|
今後の研究の推進方策 |
ヒト皮膚モデルを用いた経皮吸収促進効果の解析ではm19の吸収促進効果は認められなかったものの、m19の機能ドメイン解析・立体構造解析によりm19のCL結合領域(C末側clef tspace)への正電荷の付与がCL-1結合性に関与していることを見出した。今後、m19/CL-1、C-CPE/CL-1複合体の立体構造解析情報の集積を図り、立体構造情報を有効活用することでdruggable CL-1 binderを作出し、CLを利用した経皮投与技術を開発する予定である。
|