研究課題
特別研究員奨励費
本研究課題はH24年度が最終年度であることから、H24年度はこれまでの研究における不足データの補足、データ解析、および国際誌への取りまとめを行った。本研究では、植生の定着が困難な荒廃地として酸性土壌に着目し、酸性土壌における初期植生成立に重要な役割を果たすアーバスキュラー菌根(AM)菌の機能と生態を明らかにすることを目的とした。1.植物耐酸性に果たすAM共生の役割昨年度までに、i)ススキ(酸性土壌のパイオニア植物)は弱酸性土壌(pH5.2)では単独でも生長するが、強酸性土壌(pH3.2)では耐酸性の高いAM菌との共生なしには持続的に生長しないこと、ii)耐酸性AM菌との共生は、酸性土壌で根が受けるアルミニウム障害を緩和しないことが分かった。本年度は、リン酸施肥を行って同様にススキを栽培したところ、pH5.2ではリン酸施用の効果が認められたが、pH3.2ではリン酸施肥を行ってもススキは枯死することが分かった。これらの結果から、耐酸性AM菌との共生はススキの生存限界pHを引き下げること、および酸性土壌では耐酸性AM菌が損傷した根に代わる養分吸収経路を提供することが示唆された。2.土壌酸性度に対するAM菌群集構造の応答昨年度までに、国内の強酸性一中性土壌に自生するススキと共生するAM菌の群集構造を調べた。また、酸性および中性土壌由来AM菌群のpHに対する応答を、モデル実験により調べた。結果から、i)AM菌群の多様性はpHの低下に伴い低下すること、ii)中性土壌には耐酸性菌と酸性感受性菌が混在すること、iii)酸性土壌に棲息する耐酸性菌は、酸性土壌に特異的なスペシャリストではなく広範なpHに適応できるジェネラリストであることが分かった。平成24年度は、これらの研究成果を国際誌および学会で発表した。これらの研究成果は、酸性土壌の緑化修復のための技術開発に貢献することが期待される。
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すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (11件)
Oecologia
巻: (印刷中) 号: 2 ページ: 533-543
10.1007/s00442-013-2622-y
生物科学
巻: (印刷中)
PROTIST
巻: 印刷中