研究概要 |
近年,英語教育の現場では実践的コミュニケーション能力の育成を図ることが求められており,中学校や高校の学習指導要領にも同様の記述が見られる。しかし,円滑で効果的なコミュニケーションをするためには,「何を」伝えるかよりも,「いかに」伝えるかが必要不可欠となる。具体的に効果的なコミュニケーションを達成する1つの方法は,対比,理由,結果,列挙,例示といった接続語や(メタ)談話標識によって,談話のユニット間の論理関係や意味関係を表すことである。従って,実践的コミュニケーション能力の育成を図る上で,学習者による(メタ)談話標識の使用傾向を調査し,彼らの談話構造における特徴や誤用を究明することは極めて重要である。 しかしながら,これまでの研究では,手作業による談話分析のコストが高いこともあって,限られた数の学習者データしか扱うことができず,そこから得られた結果がどこまで普遍的なものかを検証することが難しかった。さらに,大規模な調査を行う場合は,多くの分析者が必要となり,どうしても結果が個々の分析者による主観に影響されてしまうという欠点があった。 本研究では,日本人中学生,高校生,大学生の英作文を集めた学習者コーパスをテキストマイニングの手法を用いて客観的に解析し,そこから得られた結果を様々な角度から比較検討した。まず,相関分析,対応分析,クラスター分析などを用いて,分析データの全体像を把握し,データの構造を視覚的に提示した。また,メタ談話標識の意味カテゴリー別に詳細な量的分析と質的分析を行い,母語話者と日本人学習者の英作文を識別する特徴を抽出した。そして,日本語を含む17種類の異なる言語を背景とする書き手の英作文データを統計的に比較した。さらに,日本の中学校・高校の英語検定教科書におけるメタ談話標識の提示のされ方を調査し,日本人学習者によるメタ談話標識の使用傾向との関係を明らかにした。
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