研究概要 |
平成24年度は、本研究課題の最終年度にあたるため、主に昨年度までの研究の総括・整理にあたった。特に、1年目の平成22年度に投稿した論文"Skill-biased technical change,educational choice,and labor market polarization:the U.S.versus Europe"が2度目の改訂の結果、国際学術誌Journal of Economic Inequalityへの掲載を受諾された。この論文では、技術変化が労働市場の二極化に与える影響が先進国間(特にアメリカと大陸ヨーロッパ諸国)で異なっているという事実に注目し、教育投資と企業の採用戦略の補完性によってこれらの事実を説明する理論モデルを提示した。また、論文の改訂では、理論予測の現実性を検証するために、数値計算に基づく理論の量的含意の検証をおこなっており、理論の予測する複数均衡の存在条件が現実的なパラメーターの元で満たされることを確認した。この研究は本研究課題の主要な目的である、技術変化と労働市場の相互関係について分析した研究であり、本研究課題について1つの成果を形にできたと考えている。 また、昨年度から引き続きおこなってきた経済発展と不平等の関係を分析した研究を大幅に改訂し、論文"Inequality,extractive institutions,and growth in nondemocratic regimes"としてまとめて学術誌へ投稿した。この研究では、所得の不平等が市民の政治的選考の異質性を増大させる結果、政治家に対する規律付けを困難にし、経済成長にとって負の影響を与える可能性があることを指摘している。今年度は、この論文の主張がより現実的なモデルの仮定のもとでも成り立つことを確認し、定式化に対して大幅な修正を加えた。
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