研究概要 |
今年度は、LHC実験やニュートリノの精密測定の実験(Daya Bay, RENO, Double Chooz, T2K)に基づいた、フレーバー模型の構築を行った。レプトンセクターに関しては、Daya Bayの実験により、これまで測れていなかった第一世代と第三世代の混合角であるθ13の大きさが測定された。それにより、tri-bimaximal混合とは大きく違ったフレーバー構造の解析が必要となり、これに対応して、質量行列の構造を見直した。特に、A4非可換離散対称性を用いて、θ13の大きさを予言した。LHC実験では、Higgs粒子や新粒子探査以外に、ボトムクォークとストレンジクォークから成るBs中間子のCPの破れの大きさを測定している。そこで、フェルミオンとボソンを交換する超対称性(SUSY)を導入し、クォークのSUSY粒子であるスクォークのフレーバー構造を解析することにより、Bs中間子のCPの破れの大きさを予言した。模型をSUSY化したときに現れる、フレーバーの変わる中性カレント(FCNC)の中で、b→sγの過程があるが、この過程もスクォークのフレーバー構造により、大きさを評価した。バレンシア大学(IFIC)のJ.F.W.Valle教授のグループとの共同研究により、A4非可換離散対称性を用いて、クォーク・レプトンを統一的に扱う模型を構築した。この模型はSUSY化されており、Higgs粒子が2種類あることによって、荷電レプトンとダウン型クォークの質量に関係を付けることができた。また、クォークのカビボ角とレプトンの世代混合角θ13に関係を付けることができた。非可換離散対称性を用いた研究は世代起源の解明に迫ることができ、LHC実験やニュートリノ振動の精密測定等の実験に重要な成果を期待させる点で大きなインパクトを与える。また、これらの研究成果をスペインのバレンシアで開催された国際会議(FLASY 2011)で発表した。国際的に活動をすることは、これから研究活動を進める上で、非常に重要なことだと感じる。さらに、名古屋大学と富山大学と金沢大学からセミナーに招待され、世代対称性、特に、非可換離散群を用いた現象論について講演を行った。
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