研究課題/領域番号 |
10J03034
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
思想史
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研究機関 | 一橋大学 |
研究代表者 |
馬場 智一 一橋大学, 大学院・社会学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2010 – 2012
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研究課題ステータス |
完了 (2012年度)
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配分額 *注記 |
2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
2012年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2011年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2010年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | レヴィナス / ハイデガー / フッサール / 融即 / 存在の類比 / 無限判断 / モナド / ユダヤ哲学 / レオン・ブランシュヴィク / ジャコブ・ゴルダン / マイモニデス / エチエンヌ・ジルソン / ヘルマン・コーヘン / フランツ・ローゼンツヴァイク / 新カント主義 / ユダヤ教学アカデミー |
研究概要 |
平成24年度は交付申請書に記載した研究実施計画のうち(1-3)~(1-5)および(2-1)~(2-3)を遂行した。これによりレヴィナスによる西洋哲学批判には以下の二つの重なり合う焦点があることが明確になった(1)パルメニデス、プラトンから始まる「融即」の哲学の歴史。(2)特にその中でも近代哲学の前提する主体概念の「照明」構造。 上記の二つの焦点は、レヴィナスが翻訳したフッサールの『デカルト的省察』とレヴィナスが聴講したハイデガー講義『哲学入門』における相互共存在をめぐる対立にその出発点がある。融即概念はハイデガーがこの講義で「前学的」な現存在の相互共存在を特徴づける際に訴える「マナ表象」に近いものである。レヴィナスは、社会性の存在論的基礎をこうした相互的な合一に置くことに対して強く反対し、またフッサールのように照明の構造を備えた「閉じた」モナドから出発することも拒否した。この批判はしかし外在的批判ではなく、そもそも融即状態とは何かについての現象学的な分析に支えられている。この分析がいわゆる「イリヤ」の概念であり、ハイデガーやフィンクの「像」論への批判もこうした背景から初めて理解される。レヴィナス自身の立場は、同僚のジャコブ・ゴルダンの影響下、マイモニデス以来の無限判断の論理に基づいている。 レヴィナスは西洋哲学を〈同〉の哲学の歴史として大胆に批判していることはよく知られているが、それが前提とする「融即」概念がどのようなものなのか、正確な吟味はなされてこなかった。また非常によく知られた「イリヤ」概念がそうした批判的哲学史観とどのような関係にあるのかも余り論じられなかった。さらにはその出発点にあるフライブルク留学期の意義が、その後の思想展開に照らし合わせて推し量られることも稀であった。平成24年度の研究成果はこうした現状に対して大きな貢献ができたといえる。
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