研究課題
特別研究員奨励費
採用最終年度の平成24年度は、これまでに引き続き核酸糖部と塩基部の化学修飾による核酸のスイッチ化を中心に研究を進めた。まずセレン原子の酸化還元特性に着目し、セレノメチレン架橋型人工核酸(SeLNA)の合成と機能性評価を行った。SeLNAは酸化剤(過酸化水素、mCPBA等)によってセレノキシド型(SeOLNA)に効率よく変換され、続く還元剤(DTT、グルタチオン等)処理によって再びSeLNAへと戻すことが可能であった。この構造変換は繰り返し可能であり、SeLNAが優れた酸化還元応答性を有していることが明らかとなった。続いて2つの人工核酸の二重鎖形成能を融解温度(Tm値)測定によって評価した結果、SeLNAはSeOLNAを大きく上回るTm値を示し、核酸スイッチとしての可能性が見出された。最後にこの二重鎖形成能の差を利用し、周囲の酸化還元環境の変化を蛍光強度の変化によってセンシング可能なモレキュラービーコン型核酸スイッチの開発に成功した。核酸塩基部のスイッチ化については、昨年度開発に成功した2-メルカプトベンズイミダゾール誘導体のさらなる機能性評価を行った。まず光刺激による鎖交換反応を蛍光基と消光基を利用したFRETによって評価した結果、効率よく二重鎖の組み替えが進行していることが明らかとなった。またこの機能性の発揮は配列や標的(DNAもしくはRNA)に依存しないことも確認した。さらに現在は光鎖交換反応が細胞内においても進行し得ることを確かめるため、アポトーシス関連タンパク質であるBadとBc1-xLのrnRNAを標的としたin vitro試験を検討中である。その際には架橋型人工核酸2',4'-BNA修飾やリン酸ジエステル部のホスホロチオエート化を組み合わせ、標的mRNAとの結合親和性や核酸分解酵素に対する耐性能を高める工夫を施している。
すべて 2013 2012 2011 2010
すべて 雑誌論文 (3件) (うち査読あり 3件) 学会発表 (7件)
Angewandte Chemie International Edition
巻: 52 号: 19 ページ: 5074-5078
10.1002/anie.201300555
Chemical Communications
巻: 48 号: 89 ページ: 11020-11022
10.1039/c2cc36464f
Chemistry a European Journal
巻: 17 ページ: 7918-7926