本研究では、蛍光分子の励起-発光過程における飽和現象により得られる非線形な蛍光応答を利用し、光の回折限界を超えた空間分解能を有する蛍光顕微鏡を開発してきた(飽和励起(SaturatedExcitation:SAX)顕微鏡)。SAX顕微鏡では、従来の共焦点蛍光顕微鏡の光学系で励起光強度の変調をするだけで、非線形な蛍光応答の検出が出来る手法を実現している。このため本顕微鏡ではレーザー光源が単一で良く、従来の共焦点顕微鏡の光学系をそのまま用いられるというシンプルな構成を特徴としている。昨年度はより高い空間分解能の実現を目指し、超短パルスレーザーを用いた高次非線形な蛍光応答の誘起に取り組んだ。 当該年度は、生体試料の蛍光観察時における蛍光褪色および細胞損傷を抑制できる条件さぐるため、超短パルスレーザーのパルス幅、繰り返し周波数、平均励起光強度を変えながら、試料観察を行った。本実験には昨年度に構築した超短パルスレーザーのパルス幅、繰り返し周波数の調整機構を用いた。 これまでSAX顕微鏡で得られている空間分解能は通常の共焦点蛍光顕微鏡の約2倍程度であり、他の超解像顕微鏡と比べそれほど高くない。しかしながら、SAX顕微鏡では励起光強度を変調するだけで空間分解能が向上でき、さらにレーザー光も1つで良いため、多様な試料を観察できる。また、蛍光像取得の際に、画像処理が不要な点も利点である。そして、その光学系は通常の共焦点蛍光顕微鏡に音響光学素子とロックインアンプを加えただけであるため、簡便かつコストパフォーマンスが良い。このことは超解像法の普及、新しいアプリケーション開発に大きなアドバンテージとなると考える。
|