研究概要 |
本研究は,軌道上サービスロボットによる衛星捕獲時の接触制御法の確立を目的とした.衛星捕獲技術は故障衛星の修理や,運用を終えた衛星のデブリ化を解消し,持続可能な宇宙利用のための根幹技術である.衛星を安全且つ確実に捕獲するためには,捕獲時に発生する接触により誘発される相対運動を適切に制御することが重要である.上記を踏まえ,本研究では接触時のマニピュレータ手先と被捕獲衛星間の反発係数(相対運動)を適切に制御する手法の研究を行った.最終年度である本年度は提案手法の検証実験及び成果発表に重きを置いた. 本研究では手首コンプライアンスとインピーダンス制御を用いた接触制御手法を提案し,従来の研究にはなかった衛星捕獲時のマニピュレータ手先と被捕獲衛星間の反発係数(相対運動)を適切に制御可能であることを実験で示すことに成功した.一般に,接触現象は連成振動系でモデル化が可能であるが,振動周期が短いためマニピュレータを用いて接触を適切に制御するのは困難である.上記に対する機構的な解決策として手首コンプライアンスを導入し,支配的な振動モードを手首機構のモードに代表させることで振動周期を伸ばし,マニピュレータによる接触制御を可能とした.制御則についても支配的な振動モードを制御するよう構築することで,反発係数を適切に制御可能とした.提案手法の検証は,地上で微小重力環境を模擬することが可能な空気浮上テストベッドを用い,接触力及び反発係数を提案した制御式で適切に制御可能であることを多くの実験データと共に示した. 本研究は,パッシブな機構を積極的に制御系に組み込むことでアクティブな制御を可能とした点,及び支配的な振動モードに着目した制御則を構築した点で,その意義は大きく,衛星捕獲時のみならず惑星探査機の着陸手法など,接触制御が必要な様々な分野への応用が期待できる.
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