研究課題/領域番号 |
10J03656
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
無機化学
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
吉田 将己 九州大学, 大学院・理学研究院, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2010 – 2012
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研究課題ステータス |
完了 (2012年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2012年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | 人工光合成 / 酸素発生 / ルテニウム錯体 / 混合原子価錯体 / 電気化学 / 単結晶構造解析 / セリウム / DFT計算 |
研究概要 |
本課題では、高活性酸素発生触媒の創製を目的とし、触媒活性サイト近傍の構造と触媒活性との相関について詳細に比較検討を行ってきた。特に、酵素の触媒メカニズムに倣い、配位子上に機能性の置換基を導入することで金属中心との共同効果による触媒の高機能化・高活性化を図り、酵素のような高活性触媒を開発することを最終目的としている。前年度、酸化剤であるセリウム(IV)へと配位可能なスルホ基をルテニウム触媒上に導入したルテニウム触媒の開発に成功した。本年度は、結晶構造解析・反応速度論解析等を用いてその反応機構の詳細解明に着手し、またこの研究を進める過程で得られた興味深いルテニウム二核錯体の構造・物性評価も行った。 スルホ基を導入した新規ルテニウム錯体、及び対照実験として無置換の錯体を触媒とし、セリウム(IV)を酸化剤として用いて酸素発生の検討を行った。その結果、スルホ基を導入した錯体の触媒反応速度が加速されていることを見出した。一方で無置換の錯体に対し遊離のスルホン酸を添加した際には活性の低下がみられたことから、今回の活性の向上はスルホ基そのものの性質ではなく、スルホ基がセリウム(IV)に配位することで得られたものだと示唆された。さらに、錯体上のスルホ基がセリウムへと配位した結晶構造を得ることにも成功した。一方、この想定した成果に加え、研究を進める過程で見出されたオキソ架橋混合原子価ルテニウム二核錯体が非常に興味深い電子状態をとることも見出した。この成果はルテニウム錯体の電子状態・反応性に関する研究の大家である米ノースカロライナ大のT.J.Meyer教授からも非常に高い評価を得ている。 以上のように、本課題では酸素発生触媒において初めての「能動的に酸化剤を捕捉し、触媒反応を有利に進行させる『人工酵素』」の開発に成功した。このような新概念の錯体群を世界に先駆けて開発した重要度は極めて大きい。
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