研究課題
特別研究員奨励費
重い電子系d波超伝導体であるCeCoIn_5を念頭に置き、その特異な磁場中物性の解明を目指し理論研究を行った。この物質は、パウリ常磁性効果が大きく低温高磁場相にFulde-Ferrell-Larkin-Ovchinnikov(FFLO)状態が実現しているのではないかと考えられ、その物性の解明が求められている。FFLO状態は超伝導状態の発現に重要なクーパー対形成機構と密接に関係しており、FFLO状態の物性を理解することは、非常に重要である。CeCoIn_5の結晶面内へ磁場を印加した際に現れる新奇相が、通常のFFLO状態とは異なり、磁気秩序と共存した状態であることが、近年行われた実験により明らかになった。この実験を受け、新奇相がこの系に特徴的な1.強い常磁性効果と2.超伝導ギャップに存在するノード構造、および3.磁束渦糸の三つの要因により、もたらされるスピン密度波(SDW)であると考え研究を行った。これを示すため、準古典理論を用い渦糸状態でのフェルミ面上の状態密度を数値解析により明らかにした。これにより、上述の三つの特徴を考慮した場合かつ、面内磁場化においてのみ、超伝導ギャップのノード近傍においてスペクトルが増大し、SDWが安定する可能性があることを明らかにした。また、CeCoIn_5の結晶のc方向へ磁場を印可した際に現れる新奇相は純粋なFFLO状態だと考えられている。これに対し我々は、FFLO状態の実現に伴う物理量の空間構造の変化を数値解析により明らかにし、これを直接同定する実験手段を提案した。具体的には、NMRスペクトルにFFLO状態実現に伴う新たなスペクトル構造が、正常状態のスペクトル位置近傍に出現することを明らかにした。さらに、中性子散乱実験で観測可能な磁束渦糸構造因子の磁場変化を明らかにし、磁場の方向の変調成分である(102)成分が観測可能であることを示し、これらを実験により観測し、FFLO状態の空間構造を直接同定することを提案した。
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