研究課題/領域番号 |
10J03768
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
医用生体工学・生体材料学
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研究機関 | 京都大学 (2012) 東京医科歯科大学 (2010-2011) |
研究代表者 |
下田 麻子 京都大学, 工学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2010 – 2012
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研究課題ステータス |
完了 (2012年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2012年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | ナノゲル / エレクトロスピニング / ナノファイバー / タンパク質デリバリー / 架橋 / ハイドロゲル / 骨再生 / がん治療 / RGDペプチド |
研究概要 |
我々はこれまでに、疎水性の高いコレステリル基を部分的に(1~5%)置換した多糖プルラン(コレステリル基置換プルラン、CHP)が希薄溶液中で自己組織的に会合し、ナノサイズ(20~30nm)のヒドロゲルを形成することを見出した。CHPナノゲルはタンパク質を自発的に取り込み安定化させ、その分子シャペロン効果により活性を保持したまま内包物を放出することができる。本研究では、エレクトロスピニング法を用いて新素材として注目されているナノファイバーの作製を試みた。 まず、ナノゲルのみを用いたファイバーの形成を試みた。これまでに検討した重合性基を付与したCHPナノゲルを生分解性の架橋で集積させたナノゲル架橋微粒子を調製した。この時、溶媒組成、ナノゲル濃度、架橋度、流速、シリンジと基板との距離、電圧などのパラメーターを変化させてエレクトロスピニングを行った。しかし、溶液の粘性が低く、溶媒の乾燥が不十分であるためにbeadsしか得られなかった。 次に、細胞培養基板として広く用いられているゼラチンとナノゲルの混合系について検討した。ゼラチン自体は水溶性のため、エレクトロスピニング後に架橋反応を行う必要がある。今回はゼラチンとナノゲル両方を溶解することのできるPBSとエタノールの混合溶媒を用いることで、insituで架橋反応が可能なファイバーを形成することとした。ゼラチン及びナノゲルをPBSとエタノールの混合溶媒に加え、これに縮合剤であるEDC及びNHS溶液を添加し、一定時間後にエレクトロスピニングを行った。その結果、縮合剤の濃度や架橋反応時間、ゼラチンの分子量の違いに応じて200-1200nmの様々な直径のファイバーを得ることに成功した。水中での安定性をみるために、得られたファイバーを1~2日水に浸漬させたサンプルをSEMで観察したところ、浸漬前と同様にファイバーの形状を保持することが示された。また、蛍光修飾ナノゲルを用いてファイバーにおけるナノゲルの分布状態を蛍光顕微鏡で観察したところ、ファイバー全体にナノゲル由来の蛍光が見られた。 ナノゲルの特筆すべき点として、タンパク質を安定に保持し、活性のある状態で放出できることが挙げられる。ファイバーにタンパク質を内包したナノゲルを封入することで、ファイバーからタンパク質を徐放する素材の開発が期待できる。そこで、モデルタンパク質としてウシ血清アルブミン(BSA)をナノゲルに内包し、これとゼラチンを混合し上記の方法と同様にエレクトロスピニングを行ったところ、300nm前後のファイバーを形成することが確認された。今後はナノゲルからのタンパク質の放出速度の検討や、ファイバーを何層にも重ねることで複数の種類のタンパク質を順番に放出させるシステムの構築を目指す。
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