研究課題
特別研究員奨励費
主要作物はその収量の約20%がウイルス病により失われており、ウイルス病の防除は農学における最重要課題の一つである[Plant Virus Disease Control,1998]。しかしながら、植物ウイルスはその増殖に宿主植物の因子を利用するため、ウイルスの増殖のみを阻害するような農薬は開発されていない。従って、ウイルス病の防除戦略として、植物が備えているウイルス防御機構を解明し、応用することが有効である。今年度はウイルス防御機構Extreme Resistanceを解明するための実験システムの構築を実施した。ウイルスは植物細胞に侵入すると、(1)「タンパク質の翻訳」、(2)「増殖」、(3)「隣接細胞への移行」というプロセスで全身へと感染する。植物が備えているウイルス防御機構としてはこれまでHypersensitive Response(HR)と呼ばれる細胞応答について詳細な研究が行われていきた。HRとは、植物細胞がウイルスタンパク質を認識し、細胞死を引き起こすことで、ウイルスの(3)「隣接細胞への移行」を阻止する応答である。しかし、植物のHR関連因子の発現誘導より、ウイルスの増殖・移行が早い場合には、ウイルスの全身感染後にHRが起こり、植物体全体が細胞死するというリスクもある。そのため、HRを利用したウイルス防除技術の開発には限界がある。一方で、HRよりさらに早い細胞応答で、ウイルスの(1)「タンパク質の翻訳」や(2)「増殖」を阻止するExtreme Resistance(ER)という防御機構が報告されている。ERはウイルスの増殖を許容しないため、HRのように植物体全体が細胞死することはない。そのため、ERの分子制御メカニズムを解明し、極めて効果的な新規ウイルス防除技術の開発に応用することを目指す。ERは、ジャガイモのタンパク質RxがジャガイモXウイルスの外被タンパク質を認識して引き起される例が知られている。しかし、ジャガイモではタンパク質データベースが整備されていないため、ER時のプロテオーム解析を行うことができない。そのため、本研究ではウイルスにジャガイモXウイルス、植物にはRxを形質転換したシロイヌナズナを使用する。
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Journal of General Plant Pathology
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http://papilio.ab.a.u-tokyo.ac.jp/planpath/ppref.html