研究課題
特別研究員奨励費
平成24年度は前年度から取り組んでいるmicroRNA-210(miR-210)に関する研究をまとめ、論文投稿を行い、Journal of Biological Chemistryに受理、掲載された。研究対象としたmiR-210は低酸素環境下で発現が誘導され、2つの鉄代謝関連遺伝子の発現を抑制することを明らかにし、miRNAが細胞の鉄代謝を制御することを示した。さらに、細胞から分泌されるmiRNAはエクソソームという脂質二重膜の中に内包されていることが知られているが、miRNAの他にも多くの蛋白質が含まれることも知られており、様々な細胞株から分泌されるエクソソームに共通して含まれる蛋白質の探索を行った。その結果、がん細胞を含む前立腺細胞株4種類とがん細胞株を含む乳腺細胞株5種類から分泌されるエクソソームにはCD9とCD81が多く含まれることが明らかになった。従来エクソソームマーカーとして用いられて来たCD63は細胞株間で発現量に違いが見られた。全11種類のマーカーの発現を確認し、現在、Journal of Extracellular Vesiclesに投稿、改訂中である。またエクソソームの定量方法の確立も目指した。エクソソームは脂質二重膜上に特定のタンパク質を発現しており、これを抗原とし、二つの抗体を用いて挟み込み、ELISAに似た方法でエクソソームの定量法の開発を行った。細胞株の培養上清から回収したエクソソーム中に含まれる特定の蛋白質は定量可能となった。今後はこの定量方法を応用して血中のがん細胞由来エクソソームの検出、すなわち新規診断法の確立、さらには、薬剤感受性や薬剤耐性能の獲得の有無などを、本方法を用いてモニタリング可能であるか検討する。
2: おおむね順調に進展している
前年度より行っていたmicroRNAに関する研究をまとめ、論文発表を行うことができた。また、同時に、microRNAを内包しているエクソソームという細胞外小胞に関する、研究を進め、それらの定量方法および蛋白質について解析することができた。
今後の研究は細胞外小胞エクソソームについて詳しく解析する。エクソソームの定量法を確立することで、新規診断法の確立、さらには、薬剤感受性や薬剤耐性能の獲得の有無などを、本方法を用いてモニタリング可能であるか検討する。しかし、血中におけるエクソソームの蛋白質プロファイルなどは未知な部分が多く、診断に用いる標的蛋白質などを決定することが必要である。
すべて 2013 2012 2011 2010
すべて 雑誌論文 (9件) (うち査読あり 9件) 学会発表 (23件) 図書 (5件)
SCIENTIFIC REPORTS
巻: 3 号: 1 ページ: 1197-1197
10.1038/srep01197
The Journal of Biological Chemistry
巻: 287(41) 号: 41 ページ: 34110-9
10.1074/jbc.m112.356717
Advanced Drug Delivery Reviews
巻: 7(10) 号: 3 ページ: 376-82
10.1016/j.addr.2012.07.011
PLoS ONE
巻: 7(10) 号: 10 ページ: e48366-e48366
10.1371/journal.pone.0048366
巻: 287(2) 号: 2 ページ: 1397-1405
10.1074/jbc.m111.288662
Scientific reports
巻: 2 号: 1
10.1038/srep00314
Molecular Therapy
巻: 19(6) 号: 6 ページ: 1123-1130
10.1038/mt.2011.53
Molecular Cancer
巻: 10 号: 1
10.1186/1476-4598-10-135
巻: 285 ページ: 17442-17452