研究概要 |
環境水の浸透圧変化に伴う塩類細胞の入替りについて明らかにするため、本研究ではティラピアを淡水から70%海水へ直接移行し、サンプリングを行った。まず環境水の浸透圧変化による鰓での細胞死を検証するため、TUNEL法を用いてアポトーシスを検出した。その結果、移行1日後にアポトーシスを起こす細胞が有意に増加した。更に、移行1日後の鰓上皮細胞を透過型電子顕微鏡で観察したところ、アポトーシスが塩類細胞で起きていることが確認された。以上から、淡水型塩類細胞がアポトーシスを起こすことで鰓でのイオン吸収が抑えられ、70%海水移行に伴い高くなった体液浸透圧の正常化に寄与していると考えられた。 次に、BrdU法を用いて塩類細胞の加入を検討するため、淡水馴致ティラピアをBrdUで処理した後、淡水または70%海水へ移行し1,3,7日後に鰓をサンプリングした。この鰓をBrdUとNa+/K+-ATPaseに対する抗体を用いて二重免疫染色を行い、新しく分化した塩類細胞を検出した。その結果、BrdU陽性の核を有する塩類細胞は「単体の塩類細胞」と「塩類細胞の複合体」の2種類に分類できた。BrdUで標識された単体の塩類細胞は、70%海水移行群でも淡水群と同様に出現するのに対し、塩類細胞の複合体の分化は移行群で有意に増加した。ここから70%海水移行群では、単体の塩類細胞に加え塩類細胞複合体を新たに分化させることで海水適応能を高めていると考えられた。 本研究における成果は国際誌Comparative Biochemistry and Physiologyに申請者をファーストオーサーとした原著論文で発表される予定で、現在は印刷中である。
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