研究課題
特別研究員奨励費
細胞機能を理解する上で、細胞内で起こる蛋白質問相互作用を解析するための技術は必要不可欠である。私はそのための新しい手法として、新たに開発した蛋白質化学修飾法であるLDT (Ligand-Directed Tosyl)化学の活用を試みた。LDT化学では、蛋白質に導入したい機能性分子とリガンドをフェニルスルホン酸エステルを介して連結したラベル化剤を用いる。標的蛋白質がラベル化剤を認識すると蛋白質表面のアミノ酸からトシルエステルへのSN2反応が進行し、ラベル化と同時にリガンド部位が切り離される。そのため、蛋白質本来の機能を損なうこと無く、標的選択的かつ部位特異的に機能性分子を蛋白質に導入することが可能である。今年度の研究において私はLDT化学により蛋白質に蛍光色素を導入し、蛋白質問相互作用を蛍光変化により検出できるか検討した。具体的には、蛍光色素としてOregon Green (OG)を有するLDTラベル化剤を合成し、これをFKBP12と反応させた。得られたOG修飾FKBP12溶液に、リガンドであるラバマイシンを添加すると、OG由来の蛍光強度が大きく減少した。その溶液に、FKBP12-ラパマイシン複合体と相互作用する蛋白質FRBを添加すると、蛍光強度は元の値まで回復した。このことからLDT化学を用いてFKBP12に蛍光色素を導入することで、リガンドの結合およびそれに続く蛋白質問相互作用を蛍光強度変化で解析可能な蛍光レポーターを構築可能であることが示された。また、LDT化学によって細胞内在性FKBP12にOGを選択的に導入することで、赤色蛍光蛋白質を融合したFRBとの相互作用をin-cell FRET解析することに成功した。この結果から、LDT化学による内在性蛋白質化学修飾と既存の蛍光蛋白質標識技術を組み合わせることで、内在性蛋白質の機能や動態をイメージング解析可能であることが示された。
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Journal of the American Chemical Society
巻: 134 号: 4 ページ: 2216-2226
10.1021/ja209641t