研究課題/領域番号 |
10J05007
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
地域研究
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
澤田 望 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特別研究員(DC2) (70728146)
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研究期間 (年度) |
2010 – 2011
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研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
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配分額 *注記 |
1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | アフリカ史 / 大英帝国 / 新聞 / ナイジェリア / 市民社会 / 任意団体 / ヨルバ / 植民地エリート |
研究概要 |
本研究は、英領ナイジェリアにおける任意団体活動の実態および表象を検討し、当該地域における「市民社会」の歴史的発展過程を明らかにするものである。本年度は、1880年から1920年に出版されたラゴス新聞の再評価を行うとともに、記念事業団体に関する叙述の分析を進めた。アフリカを対象とした記憶研究が、内戦・植民地支配のトラウマや、国民国家の成立と記憶の問題、さらに口承伝統や宗教行事等を媒介とする現代の記憶化を題材としてきた一方で、本研究の記念事業団体分析は、従来の記憶研究の理論を応用しながら、19世紀後半から続く記念・顕彰行為の歴史的変遷を明らかした。記念事業団体のラゴス新聞における叙述に共通するのは、自らのネイション(ヨルバランド、ラゴス、ナイジェリアなど状況により変化)の歴史を「構築」する手段として記念事業が一翼を担うと繰り返されていた点である。記念事業によって歴史を創造し、目に見えるかたちで記録に残すことが、ラゴス社会の近代化を促進すると主張されており、同様の言説が流通し受容されていた。ここで注目すべきは、イギリスの記念・顕彰行為とともに、ヨルバ民族の記念行為が進歩的な見本として参照されていることである。さらに、2011年7月と11月にはイギリスで、アフリカの出版文化史と教育史に関する文献資料収集とラゴス新聞の内容分析を行った。本研究を土台とした博士論文の口頭試問通過が、本年度における最大の成果であり、通時的な視座から植民地初期のラゴス新聞を詳細に読み込み、一次史料の社会史的分析と新聞記事の内容分析や広告分析を組み合わせた手法と視点の独自性が高く評価された。また、ラゴスで出版された新聞の史料的価値に関する論文を執筆中であり、雑誌への投稿を予定している。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本研究の目的は、植民地初期ナイジェリアにおける「市民社会」の歴史的発展過程を明らかにすることである。当該地域および時代に対する「市民社会」概念の適合性は留意すべきであるものの、任意団体活動の実態および新聞の表象分析を通して、出版文化史におけるラゴス新聞の再評価と、従来宗教別・階層別・人種別に分断された社会だと書かれてきた19世紀後半から20世紀前半のラゴス社会の再解釈が可能になった。
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今後の研究の推進方策 |
今後も、植民地という空間を本国から分離したものとしてとらえるのではなく、本国/植民地、支配者/被支配者を、その二重性に留意しながら一つの分析枠で扱い、本研究が対象とした地域および時代における「公共圏」論や「想像の共同体」論の適用について更に精細な分析を行い、植民地初期ナイジェリアの出版文化史と発展思想の議論に寄与したい。
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