研究課題
特別研究員奨励費
霊長類と他の生物の違いを作る原因の一つに、霊長類に特異的な遺伝子制御領域の進化がある。近年、脊椎動物全般で高度に保存されるタンパク質非コード領域(HCNS:highly Conserved Noncoding Sequence)が発見され、その多くにエンハンサー活性が認められており、HCNSは脊椎動物に共通した遺伝子制御領域であると考えられる。そこで、霊長類特異的な遺伝子制御領域を特定する為、霊長類のみで強く保存する領域を抽出し、その領域が、霊長類の進化にどのように寄与したのかを調べた。ヒト・オランウータン・アカゲザル・マーモセットを始めとする全13種の脊椎動物ゲノムを比較し、計8,198個の霊長類特異的なHCNSを同定した。SNP解析から、これらの霊長類特異的HCNSはpurigying selectionを受けていると考えられ、制御領域である可能性が高い。さらに、同定した霊長類特異的なHCNSの内、強く進化的制約を受けているHCNS1,000個と、脊椎動物に共通して存在するHCNSの代表的な例としてUCE(Ultra-Conserred Element,(Bejerano et al.2004)を用いて、近傍遺伝子の機能を比較した。その結果、霊長類特異的なHCNSの近傍遺伝子(LHF gene:Lineage-specific Highly conserved gene)の多くはUCE近傍遺伝子と異なっており、特に、UCE近傍遺伝子には多く見られない発生に関与するprotein binding function機能が多いことから、タンパク質の相互作用の変化が霊長類特異的な進化に影響している可能性が示唆された。また、UCBと共通なLHF gene数のランダム解析により、これらの遺伝子の数は少ないが、予想されるより有意に多いことがわかった。UCEと共通なLHF geneには、発生に関連する転写因子を制御する機能が多いことから、ある特定のグループの遺伝子が、すでに存在する起源の古い脊椎動物共通のHCNSに加え、新しいHCNSとも相互作用している可能性が示唆された。これらの解析により、霊長類の進化に寄与する霊長類HCNSは二つのグループ1)霊長類特異的なHCNSだけが持つLHF geneのセット、2)UCE等多くの生物が持つHCNSと共通するLHF geneセット、の発現制御の違いが霊長類特異的な特徴を発達させてきたと考えられる。
すべて 2012 2011 2010
すべて 雑誌論文 (2件) (うち査読あり 2件) 学会発表 (3件)
Genome Biology and Evolution
巻: (In press) 号: 5 ページ: 641-657
10.1093/gbe/evs035
Cell Host & Microbe
巻: 10 号: 3 ページ: 273-284
10.1016/j.chom.2011.08.007