研究課題
特別研究員奨励費
分泌タンパク質や膜タンパク質は小胞体(ER)で産生され、内在アミノ酸配列による輸送モチーフによって選別され、細胞内の適切な場に輸送されその機能を発揮する。申請者らは、牛AE1のN末端近傍に存在するΦXΦXΦ(Φは疎水性アミノ酸、Xは任意のアミノ酸を表す)配列が小胞体からゴルジ装置(Golgi)への輸送を効率化していることを明らかにしてきた。本研究の最終目的は「新規モチーフ配列によるER-Golgi間輸送の分子基盤の解明」である。この新規配列がタンパク質間相互作用に重要であるとの仮説のもと、ΦXΦXΦ配列と結合するタンパク質の同定を試みた。AE1のN末端領域を含むペプチドを精製し、それをBaitとして用いてHEK293T細胞の細胞可溶化物と反応させたところ、牛AE1のN末端領域を含むペプチド(ΦXΦXΦ配列を含む)と特異的に結合する、見かけの分子量が約120kDaと85kDaのタンパク質が検出された。それらのバンド抽出物に対しFT-MS/MSによる質量分析を行った結果、それぞれの抽出物からSec24アイソフォームCとSec23アイソフォームAのペプチドが同定され、特異抗体を用いたイムノブロットおいても、実際にそれらのタンパク質のシグナルが検出された。さらに詳細な解析の結果、牛AE1のN末端ペプチドはCOPII小胞複合体のうちSec24Cと直接結合しており、その相互作用にSec24Cの895番目から897番目のアミノ酸配列(L895IL)が重要な役割を果たしていることが明らかとなった。以上の結果から、ΦXΦXΦ配列は新規モチーフ配列としてSec24に認識されることによって、ER-Golgi間の輸送を効率化していることが実証された。
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