研究課題
特別研究員奨励費
研究対象とした北極海はIPCC報告書でも地球温暖化の影響が最も現れやすいとされる海域であり、近年の急激な海氷減少からも分かる通り、現在、その環境が極めて大きく変化している海域の1つである。こうした急激な変化過程にある北極海における正確な海洋炭素循環プロセスの把握が急務の研究課題となっている。本研究は、海洋原核生物を対象として、その地理的分布・栄養獲得形式を調査し、これまでに報告されているデータも引用しながら海域ごとのバイオマス(炭素量)・炭酸固定量を算出し、表層植物プランクトン生産量に対して古細菌炭酸固定量がどの程度の割合を占めるか明らかにすることを目的とした。2008年から2010年の8月~10月、太平洋側北極海で行われた海洋地球研究船「みらい」による北極航海に乗船し、海水試料を採取した。並行して、海洋原核生物の正確な増殖速度及び代謝解明を目的とし、Rotary clean sea water sampler (ROCS) incubation system [ROCS現場培養機](最大稼動可能水深4,500m)を実験に取り入れ、北極海に適応する前段階の場として、静岡県駿河湾を設定しinsitu原核生物増殖速度の測定のための改良と実験実施を行った。CARD-FISH法を用いた海洋古細菌分布と幾つかの統計解析を併せた古細菌分布特徴解析の結果、古細菌分布が北極海水塊構造を反映して存在することが判明した。これまでの研究で、海洋古細菌の炭酸固定はアンモニア酸化によるエネルギー獲得が報告されているが、アンモニア濃度と古細菌細胞密度に関係性は認められず、アンモニア濃度の高い水塊で炭酸固定が活発に行われるとは一概には言えないと考えられた。また、海域ごとにバイオマス試算を行ったところ、原核生物バイオマスは東シベリア海で大きく、クロロフィルデータからも生物活動が活発な海域であると考えられた。一方で、ROCS現場培養機は海水試料採取から基質添加、培養に至るまでの一連の動作を問題なく行うことが出来ることが確認され、今後さらなる活用の場が広げられるだろうと予想された。
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Journal of Bioindustrial Science
巻: (印刷中)(In press)
Aquatic Microbial Ecology
巻: (印刷中)(In press) 号: 2 ページ: 101-112
10.3354/ame01624
科学技術コミュニケーション
巻: 11 ページ: 63-73
日本微生物生態学会誌
巻: 26 ページ: 7-9
巻: 印刷中
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