研究課題
特別研究員奨励費
研究目的1 : 精嚢腺由来の膣栓形成タンパク質の体内受精における必要性を調べる精嚢腺タンパク質SVS2が交尾時にメス生殖器内へ侵入し、精子と相互作用して精子の受精能を抑制することが明らかとなっている。また昨年までの結果から、SVS2を欠損したオスマウスでは産仔がほとんど得られないこと、またノックアウトマウスにSVS2を遺伝子導入すると妊孕性が回復することが明らかとなっていた。平成25年度は、そのフェノタイプを詳細に解析した。子宮内に射出された精子を電子顕微鏡で解析した結果、SVS2は精子の受精能をコントロールしていると予想していたが、子宮内ではそのような現象は見られず、SVS2は子宮内で精子を保護していることが明らかとなった。またこの結果から、子宮内には精子を殺す因子が存在すること、その因子は液性因子であり体外でも精子細胞膜を破壊する様子が観察されることが分かった。これらの結果は、これまでの常識である「メス生殖器は精子の受精を高める」「メス生殖器内は精子に快適な状況」といった概念を否定するものであり、インパクトのある雑誌への掲載が決まり、新聞やインターネットニュースなどにも取り上げられた。研究目的2 : メス生殖器による精子からのSVS2の除去機構これまでの結果から、子宮内においてSVS2は精子表面から徐々に消失し、卵子の待つ卵管では精子はSVS2と結合していないことが明らかとなっている。平成25年度は、この仕組みを明らかにする予定であったが、目的1で明らかとなった、子宮内の殺精子因子の同定が優先事項となったため、SVS2の除去機構はあまり進んでいない。マウスSVS2はヒトSemgと相同であるが、ヒトの場合、精子とSemgの結合は遠心分離用密度勾配媒体であるPercollを用いて解除できることが明らかとなった。ヒトの人工授精には、射出精子をPercollで洗浄し子宮内へ注入するのが慣例であり、この方法では子宮内で精子を守るはずのSemgが存在しないことになり、精子の生存性が低くなると予想される。Percollではなく、もう少しSemgを残した状態で精子を洗浄できる方法を考える必要があると考えられた。
1: 当初の計画以上に進展している
ノックアウトマウスの表現型を詳細に解析した結果、予想していた現象は見られなかったが、それ以上の現象を発見することが出来た。また当初の目的は論文としてまとめることであったが、想定外に高いレベルの雑誌へ掲載が決まった。
平成25年度の研究結果からは、子宮内の殺精子因子を完全には同定することが出来なかった。免疫系の因子であると想定しているため、今後は網羅的なプロテオミクスを行い、完全に同定する予定である。同定後は、その因子を欠損した雌マウスとSVS2を欠損した雄マウスを交配させて、それら因子の体内受精における必要性を確認する予定である。
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