研究課題/領域番号 |
10J05420
|
研究種目 |
特別研究員奨励費
|
配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
実験病理学
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
大倉 英明 東京大学, 新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
|
研究期間 (年度) |
2010 – 2012
|
研究課題ステータス |
完了 (2012年度)
|
配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2012年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
|
キーワード | P2Runx2 / NEOr / 骨芽細胞 / 骨形成不全 / 融合転写産物 / 致死性 / 致死性回避 / 中断 / P2-Runx2 / ノックアウトマウス / 新生仔致死 / NEO^rカセット / Cre-loxPシステム |
研究概要 |
前年度までに作製したマウスがNEOrの存在依存的にRunx2の発現抑制を受け、骨形成不全により死亡したことが明らかになった。そこで今年度はまず、今回用いた構築においてNEOrがRunx2の発現を阻害する機序の解明を試みた。NEOrとRunx2が異常なスプライシングにより融合している可能性を検証するため、Runx2特異的プライマーとNEOr上に設計したプライマーを組み合わせてPCRを行った。その結果、P1型、P2型いずれのバリアントともNEOrの結合型転写産物が増幅され、異常なスプライシングによってRunx2発現が低下していることが強く示唆された。次に、P1とNEOrとの融合転写産物が検出されたため、前年度までに報告していた「P2Runx2発現が減少していた」という結果を、プライマーの設計を変更して再検討したところ、P1型でも有意な減少が確認された。従って、今回のマウスは両Runx2が有意に減少するマウスであることが確認された。しかしながら、P1とP2の各バリアントの減少割合は異なっており、この減少非率を基に計算を行ったところ、転写レベルでは胎生18.5日の胎仔頭蓋骨細胞中ではP1型がP2型の1.88倍多く発現していることが明らかとなった。次にin vivoで見られた骨形成不全の表現型が、骨芽細胞分化不全の結果であることを確認するため、in vitroでの骨芽細胞分化アッセイを行った。各遺伝子型の胎仔マウスから調製した頭蓋骨細胞を骨芽細胞分化培地で培養した後、bone nodule形成とアルカリフォスファターゼ活性を測定した。その結果、いずれのアッセイにおいてもホモ遺伝子型由来の細胞では野生型に比べ有意な活性低下が見られ、ホモ遺伝子型マウス中ではRunx2発現の減少に伴い、未分化間葉系細胞から骨芽細胞への分化能が著しく低下していることが示唆された。加えて、これまで得られたデータを精査すると、内軟骨骨化によって形成される骨よりも膜内骨化による骨の方が大きく影響を受けており、各骨化様式の違いにそれぞれのRunx2アイソフォームの機能の違いが反映されている可能性が予想される。とりわけ、今回のマウスはP2Runx2を優先的に欠失する新規マウスであり、さらなる解析が未知の知見へと結びつくものと考えられる。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
前年度からは主題の変更を行ったが、今年度交付申請書に記載の骨解析というテーマに沿って基礎データの収集、データの解析を実現できている。特に、マウスの致死性の原因の特定がなされたことは、作製したマウスの性状の詳細を明らかにし、新規視点からデータを考察しなおすことに繋がった。またin vivoデータも得られたことで、より強固な根拠に基づく報告が可能となった。
|
今後の研究の推進方策 |
今回の研究結果を踏まえて次に解決すべき課題は、各Runx2アイソフォームが担う固有の役割とそれらの時空間的制御の解明である。さらに関係するプロモーター領域の同定、制御に関わる転写因子の特定である。この目的の達成のためには、P2Runx2の完全な欠損マウスの樹立と骨形成フェノタイプの解析が有用と思われる。また、これまで主に膜内骨化様式をたどる頭蓋骨細胞を用いた解析が行われているが、内軟骨骨化様式によって形成される骨から調製した細胞を用いたin vitro解析が必要となってくるだろう。もしくは、P2Runx2のみの特異的欠損マウスの作製が技術的に困難である場合、レポーター遺伝子を用いたP2Runx2発現細胞の追跡解析が有用と思われる。このためにも、P2プロモーターの正確な同定が今後大きな意義を持ってくるに違いない。
|