研究課題/領域番号 |
10J05493
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
細胞生物学
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
藤井 佑紀 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 特別研究員(DC1)
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研究期間 (年度) |
2010 – 2012
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研究課題ステータス |
完了 (2012年度)
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配分額 *注記 |
2,100千円 (直接経費: 2,100千円)
2012年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | 神経系前駆細胞 / クロマチン / HMGA / IMP2 / ニューロン |
研究概要 |
本研究ではこれまでに神経系前駆細胞のクロマチンの凝集状態が発生時期依存的に核全体で凝集して行くこと、早期に発現の高いクロマチン制御因子HMGAがクロマチンの凝集状態をゆるく制御することを見出していた。さらに、HMGAがニューロン分化能を促進し、アストロサイト分化能を抑制するという、早期の分化能に寄与していることを示す結果をin vitro, in vivoの系を用いて得ていた。一連の結果から、生体内においてクロマチンの凝集状態の"ゆるさ"が神経系前駆細胞のニューロン分化能に重要であることが示唆された。しかし、HMGAがどのように神経系前駆細胞のニューロン分化能を制御しているのかは明らかでなかった。そこで、平成24年度はHMGAの下流でニューロン分化能を制御する因子を探索することを目標とした。 まずマイクロアレイを用いて、後期神経系前駆細胞へのHMGA2の過剰発現で発現の上昇する遺伝子を網羅的に解析した。その結果、IMP2 (insulin mRNA binding protein 2)が得られた。IMP2が神経系前駆細胞のニューロン分化能に影響を与えるか調べたところ、IMP2にはニューロン分化能を促進し、アストロサイト分化能を抑制する働きがあった。一方で、IMP2は神経系前駆細胞の増殖能には影響を与えなかった。これまでに、我々はHMGAが神経系前駆細胞のニューロン分化能と、増殖能を促進する働きがあることを観察している。今回得られた結果より、rMP2は、HMGAの担う働きのうちの一部、即ちニューロン分化能をHMGAの下流で制御している因子であることが明らかになった。 このような神経系前駆細胞のニューロン分化能を再獲得させる働き・メカニズムを見出したのは非常に新しい知見であり、ニューロン分化能を失った神経幹細胞からニューロンを作り出すという、再生医療の観点からも重要である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
平成24年度は、これまでに神経系前駆細胞のニューロン分化能を制御する因子として見出していたHMGAの下流で働く因子を見つけ、その因子の神経系前駆細胞の性質に与える影響を調べることを目標とした。その結果、HMGA2の下流でIMP2が働くことを見出し、さらにIMP2が神経系前駆細胞のニューロン分化能を制御することを観察した。そして、これらの研究結果をまとめて論文を投稿することができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究の結果から、HMGA2の下流で働く因子としIMP2を見出した。そしてIMP2は、HMGAが担う働きのうちの一つ、すなわち神経系前駆細胞のニューロン分化能を制御する働きがあることを見出した。IMP2がどのように神経系前駆細胞のニューロン分化能を制御しているのかは非常に興味深い。これに加えて、IMP2の他にもHMGA2の過剰発現によって発現の上昇する遺伝子は存在すると考えられる。このような因子の神経系前駆細胞の性質に与える性質についても今後調べる事で、神経系前駆細胞においてニューロン分化能の詳細なメカニズムが明らかになるであろう。
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