研究課題
特別研究員奨励費
当該年度は、表面プラズモンが増強するジアセチレンの光固相重合反応の詳細検討と、金属ナノ粒子による希土類イオンの捕獲作用とその光学特性に関する研究を行った。金属ナノ粒子もしくはナノ構造体の表面においてジアセチレンの光固相重合反応を検討した例はすでにいくつか報告されていたが、それらはいずれも重合反応に相転移挙動を伴わない一般的なジアセチレンにおける例証であった。一方、本研究では、重合反応に相転移を伴う特異的なジアセチレンを用いて検討を行った。その結果、非相転移型重合反応であることに起因する、重合反応速度の特異的な励起光強度依存性の観測に成功した。すなわち、相転移を伴う重合反応においては、あるしきい値以上の励起光強度では、反応速度が無限大の相転移を起こすため、理想的には重合反応速度は励起光強度に依存しないと考えられるが、実際には相転移が引き起こされるまでに誘導期間が存在するため、表面プラズモンによる増強効果が得られることがわかった。このような検討例はこれまで報告がなく新規性が高いため、J.Phys.Chem.Cに掲載された。また、金属ナノ粒子をイオン捕獲作用を持つような配位子で覆い、希土類イオンを捕獲することによるその光学特性の変化を検討した。ここでは、表面プラズモンによる希土類イオンの発光の増強は観測されず、金属ナノ粒子のプラズモン吸収による消光効果のみが観測された。これは、捕獲された希土類イオンと金属ナノ粒子との距離が1~2nm程度であり、極めて近いために消光効果が優勢であるからと考えられる。以上の結果から、表面プラズモンによる増強効果を得るためには金属表面と対象化合物の距離が極めて重要な因子であることが示唆された。
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