研究概要 |
2年度目までに、光ファイバを活用したレーザ吸収分光法を確立し,イオンエンジン内部のXe I準安定準位823m密度分布測定に成功した。約1%程度の吸収まで判別できるようになった。3年度目はXe IIの吸収を測定するために、以下の対策を行った。 1.データの統計処理によるノイズの低減 2.ローハスフィルタにより高周波ノイズの除去 3.レーザ掃引周波数の最適化 4.実験手順を最適化し、ゼロラインを求めやすくした 5.使用する光ファイバの研磨面に角度をつけ、反射光を減らした。 これにより、吸収の検出限界を1%から0.1%まで向上させた。Xe II 484nmの吸収分光を行ったが、吸収が当初の見積り(0.1-1%)よりも小さく、測定は不可能であることが判明した。次にXe I 828nmに切り替え測定を行ったところ,最大で1%程度の吸収が得られ、吸収の0.1%程度の変化を追うことで、空間分解能2cmの密度分布を得ることに成功した。 推進剤の投入方法によって、Xe I 823nmの測定結果と同様に励起中性粒子の密度分布が大きく違うことが実験的に確認された。Xe I 828nmの測定では、導波管投入ではグリッドから-9cmに大きなピークがあることを特定した。これはマイクロ波定在波の腹の位置に一致している。Xe I 828nmは基底と共鳴遷移線を有し寿命が非常に短いために、準安定準位のXe I 823nmの測定結果では励起場所が確定できないのに対し、Xe I 828nmでは測定点と励起衝突の場所が'一致している。 しかしながら、マイクロ波の定在波による電子め加熱量は非常に小さく1 eVにも満たない。テスト粒子法による電子軌道解析をおこなったところ、放電室の内周磁石による磁力線によって電子が導波管に誘導されていることが判明した。このことから、放電室のECR領域で加速された電子が導波管に漏れてくることで導波管内にイオンも引きずりこまれ、プラズマが滞留していると考えられる。その結果導波管内で電子と中性粒子の励起衝突が起き、密度のピークが検出されたと考えられる。この導波管の電子の存在により、従来の推進剤の導波管投入ではマイクロ波が導波管で反射・減衰されビーム電流が135mA程度にとどまったと考察される。
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