研究課題/領域番号 |
10J05770
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
応用生物化学
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
田副 雄士 京都大学, 生命科学研究科, 特別研究員(PD)
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研究期間 (年度) |
2010 – 2012
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研究課題ステータス |
完了 (2012年度)
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配分額 *注記 |
2,800千円 (直接経費: 2,800千円)
2012年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2011年度: 900千円 (直接経費: 900千円)
2010年度: 1,000千円 (直接経費: 1,000千円)
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キーワード | C_4植物 / 循環型電子伝達系 / Flaveria bidentis / PGR5 |
研究概要 |
本研究では、ATPの要求性が高いC_4植物を用いて、循環型電子伝達系のさらなる増強が、弱光下におけるCO_2の漏れの軽減やC4光合成効率の改善に繋がるか、を調べることを目的としている。そこで、形質転換が可能な数少ないC_4植物であるフラベリア(Flaveria bindentis)を用いて、PGR5の過剰発現により循環型電子伝達系を増強させた形質転換体を作出した。24年度は前年度に引き続き、PGR5を過剰発現させたフラベリアの形質転換体12ラインを用いて解析を行なった。 形質転換体(Tl世代)の、チラコイド膜タンパク質当たりのPGR5量は、PGR5過剰発現体において野生株の1.5~2.0倍増加した。また、PGR5と共に循環型電子伝達系に関与していると考えられているタンパク質、PGRL1の量は、野生株の1.2~1.5倍増加した。一方で、PGR5経路とは別の循環型電子伝達系であるNDH経路の主要タンパク質、NDH-Hの量は、形質転換体で1割程度減少する傾向が見られた。 PSIIの最大量子収率(Fv/Fm)は、野生株とPGR5過剰発現体でほとんど変わらなかったことから、PGR5の過剰発現はPSII自体には影響を与えておらず、光阻害も起こっていないと考えられる。Fv/Fmの測定後、50μmol quanta m^<-2>s^<-1>の弱い励起光下で非光化学消光(non-photochemical quenching : NFQ)を調べたところ、野生株のNPQの最大値は0.4程度であったのに対し、形質転換体では約0.8と、野生株の2倍程度まで増加した。NPQの増加は、qE成分(チラコイド膜内外のプロトン勾配に関わるエネルギー依存的消光)の増加によって説明されることから、C_4植物の葉においても、PGR5の過剰発現により循環型電子伝達系が増強されていると考えられる。C_4植物においては、PGR5よりもNDH経路の方が循環型電子伝達系に大きく関与していると考えられていたが、PGR5経路もC_4光合成の循環型電子伝達系に大きく関与していることを、本研究により初めて明らかにされた。 また、励起光を段階的に上げた時のPSIとPSIIの量子収率の光依存性を同時測定した。励起光照射下におけるPSIの量子収率(φI)は、特に弱い励起光下(50μmol quanta m^<-2>s^<-1>以下)において、PGR5過剰発現体の方が野生株よりも高くなった。一方で、PSIIの量子収率(φII)は、PGR5過剰発現体において低くなる傾向にあったが、これは過剰発現体においてNPQが大きくなったことでφIIが低下したものと考えられる。今後、これらの形質転換体において、C_4光合成効率がどのように変化しているかを調べていく予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
PGR5の過剰発現体を作出し、実際にPGR5が増えていることを確認したが、光合成効率の解析までは達成できなかった。今後、形質転換体を用いて光合成効率の解析を行なった後、速やかに論文を作成する予定である。
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