研究概要 |
昨年度までに私は、シグナル分子としてのみ知られていたNotchリガンドの一つ、Dll1が接着分子として直接マスト細胞の間質細胞への接着を促進することを発見した。炎症組織では各種Notchリガンドの発現が亢進していること、更に殆ど全ての免疫担当細胞がNotchを発現していることから、Notch/Notchリガンドが接着分子として炎症組織への免疫担当細胞の集積に寄与するのではないかという仮説の下、本年度以下の疑問について検討した。 1.Dll1以外のNotchリガンドが、免疫担当細胞系譜の細胞接着に関与するか? 5種類存在するNotchリガンド(Dll1, Dll3, Dll4, Jag1, Jag2)をそれぞれ導入したOP9間質細胞を用い、マスト細胞の接着を検討した。マスト細胞のOP9細胞への接着は、Dll1,Dll4,Jag1,Jag2で促進され、Dll3では促進されなかった。接着の促進はNotchシグナルが生じない状況でも観察され、また、リコンビナントNotchリガンドの添加による競合阻害で完全に阻害されたことから、Dll3以外のNotchリガンドは接着分子としての機能を有すると示唆された。 2.マスト細胞以外の免疫担当細胞系譜の細胞接着にNotchリガンドが関与するか? CD4^+T細胞は抗原提示による活性化後、Notchの発現が上昇することが知られており、炎症組織への動員にNotchが関与する可能性がある。マウス脾臓より単離したNaive CD4^+T細胞の接着はDll1, Dll4でのみ促進された。コンカナバリンAにより活性化したCD4^+T細胞の接着は、Naive CD4^+T細胞同様にDll1, Dll4で促進されたのに対し、イオノマイシンにより活性化したCD4^+T細胞の接着はDll1, Dll4, Jag1, Jag2により促進された。よって、CD4^+T細胞の接着にもNotchリガンドが関与すること、更にJagリガンドによる接着の反応は何らかの機構により制御されることが示唆された。 以上のことから、Dll3以外のNotchリガンドが炎症組織への免疫担当細胞の集積に関与する可能性が考えられ、Notchが炎症の治療を考える上での新たな標的分子となる可能性が示唆された。
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