研究課題/領域番号 |
10J05878
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研究種目 |
特別研究員奨励費
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 国内 |
研究分野 |
美学・美術史
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研究機関 | 早稲田大学 |
研究代表者 |
清水 紀枝 早稲田大学, 文学研究科, 特別研究員(DC2)
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研究期間 (年度) |
2010 – 2011
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研究課題ステータス |
完了 (2011年度)
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配分額 *注記 |
1,400千円 (直接経費: 1,400千円)
2011年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
2010年度: 700千円 (直接経費: 700千円)
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キーワード | 仏教美術 / 如意輪観音 / 如意宝珠 / 『別尊雑記』 / 真言密教 / 醍醐寺 / 半跏思惟像 / 聖徳太子信仰 / 「別尊雑記」 |
研究概要 |
本研究は日本における如意輪観音像の展開に注目し、特に中世に日本独自の像形式があらわれた背景を解明しようとするものである。昨年度は、その背景に醍醐寺の如意輪観音信仰が密接に関わっていたこと、そして醍醐寺僧および後白河院を中心とする人的ネットワークが関与していたことを明らかにした。本年度はさらに、中世の天皇や法皇が盛んに行わせた如意宝珠を本尊とする修法と如意輪観音信仰の関係、および日本独自の如意輪観音像の展開と王権の関わりについて検討を行った。その結果、1.如意宝珠信仰が盛行した背景には、醍醐寺の如意輪観音信仰が深く関わっていたこと、2.院政期以降、醍醐寺僧が独自の如意輪観音信仰によって宮中に進出していたことを見出した。当時の天皇や法皇が如意輪観音の功徳に期待し、醍醐寺が独自の如意輪観音信仰の創出によってこれに応えようとする中で、他国には例のない如意輪観音像の展開が生み出された可能性が高い。すなわち院政期の真言密教が王権と結びつきながら飛躍的な発展を遂げる過程で、これら醍醐寺を拠点として生み出された日本独自の如意輪観音像が、重要な役割を担ったことが推察される。なお1については「宝珠法の成立と如意輪観音信仰」(2011年10月巡礼記研究会第8回研究集会)として研究発表を行い、2については「院政期の王権と如意輪観音信仰」(2012年1月 第142回奈良美術研究会)として口頭発表を行った上で、論文「後白河院と如意輪観音信仰の関わりをめぐる一試論」(『奈良美術研究』12号、2012年2月)として発表した。そしてこれらを昨年度の研究成果とあわせて博士学位請求論文(『院政期真言密教をめぐる如意輪観音の造像と信仰』)としてまとめ、早稲田大学より学位の授与を受けた。このほか醍醐寺の史料調査に参加し現地で中世史の研究者から、今後の具体的な研究手法について多くの貴重な助言を得ることができた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
1: 当初の計画以上に進展している
理由
本年度は当初の目標以上に成果発表を行うことができ、さらにこれらの研究成果をまとめた博士学位請求論文(『院政期真言密教をめぐる如意輪観音の造像と信仰』)を早稲田大学に提出し、学位の授与を受けた。またその過程で、『別尊雑記』をはじめとする図像集が仏教美術の展開において果たした役割という、具体的な研究課題を新たに見出すことができた。
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今後の研究の推進方策 |
本研究において日本における如意輸観音像の展開を追究する際、如意輪観音の形式の変遷や信仰の実態を伝える史料として、『別尊雑記』をはじめとする密教図像集を積極的に活用した。その結果、院政期の図像集の編者たちが、日本独自の如意輪観音像の成立に密接に関わっていた可能性を指摘することとなった。今後は仏像の形式に関する新たな展開が生み出される過程で、『別尊雑記』をはじめとする図像集、およびその編者が果たした具体的な役割について、さらに詳しく追究してゆきたい。
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