研究課題
特別研究員奨励費
本研究の主な目的は、フタル酸エステル類(以下PEs)による男性生殖系への影響について、ヒト集団を対象とした調査により、曝露と影響指標との関連を明らかにし、健康リスクを見積もることである。これまで、妊娠期母親とその出生男児を対象とした前向き調査を行い、母親の妊娠中フタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)曝露と出生男児の生殖影響指標(肛門性器間距離指標、AGI)との間に有意な負の関連が見られ、胎児期のDEHPやその代謝産物フタル酸モノエチルヘキシル(MEHP)への曝露により、男児の男性ホルモンレベルが低下することが示唆された。この曝露と影響の関連に基づき、日本人妊婦の曝露量と比較することとした。1.PEsによる、男性生殖系へのリスクについて、本研究のみにおける関連に基づき推定した。母親の妊娠期尿中フタル酸モノエチルヘキシル(MEHP)濃度により、母男児111組を4つに群分けした。結果、母の尿中MEHP濃度が最も高い群において、出生した男児のAGIが他の群に比して有意に短かったことから、これを影響がみられる最も低い曝露レベルとし、日本人妊婦208名のデータと比較した。その結果、208名のうち17%程度がこの曝露レベルを超過することが推定され、AGIの減少が懸念された。リスクの低減化に資することを目的とし、次にMEHPの親化合物フタル酸ジエチルヘキシル(DEHP)について、曝露媒体調査を行った。2.食事とハウスダストからのDEHP曝露の寄与を明らかにすることを目的とした。首都圏在住の日本人成人男女19名を対象とし、陰膳法による食事試料採取、およびハウスダストの採取を実施し、試料をクリーンナップ後GC-MSにより分析した。食事由来、およびハウスダスト由来の合計摂取量の内訳は、ハウスダスト(72±18%)、食事(28±18%)と推定され、ハウスダストの寄与が大きいことが示唆された。
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International Journal of Andrology
巻: 35(印刷中)(掲載確定) 号: 3 ページ: 236-244
10.1111/j.1365-2605.2011.01190.x
Environment International
巻: 36 ページ: 699-704